最終更新日 2021-11-07
2020年12月15日、iOS14.3が公開されました。
新しい機能として、iPhone12 Pro系にはApple ProRAWが搭載されています。
早速、試してみましたが、「Apple ProRAWで撮っておけば、一眼レフカメラがなくてもなんとかなってしまう」そんな印象を持ちました。
そこでこの記事では、Apple ProRAWの使い方とMacの写真アプリでの編集の仕方を解説します。
この記事の目次
【Apple ProRAW使い方】Mac写真アプリの編集や書き出し
そもそも、Apple ProRAWとはなにか。
RAWとは、「生」という意味です。
RAWデータとはその名の通り、写真を撮ったまま手を加えていない状態を言います。
「撮ったままって、どういうこと?これまでもその状態じゃなかったの」と疑問に思う人もいるかもしれません。
iPhoneでは普通に写真を撮ると、iPhone内で自動的に編集された画像が表示されるのです。
思い通りに編集ができるRAWデータ
iPhoneで写真を撮ると、形式はHEICになります。
これはアップル独自の形式で、JPGに比べ容量を半分にできるのが特徴です。
iPhoneはこのHEICの形式で写真を撮った際、iPhone内で良い感じに自動調整してくれています。
iPhoneの写真がぱっと見で綺麗なのは、この自動調整がうまくいっているからなんですね。
ただ人によっては、この自動調整が邪魔だったりします。
「調整がなされていないRAW(生の)データを編集したい」そんな要望があるのです。
その要望に応えるのが、Apple ProRAWというわけです。
DNG形式での保存で、データ量が増大に
Apple ProRAWで撮った写真の形式は、HEICではなくDNGになります。
DNGとはアドビ社が提唱しているRAWデータの形式です。
DNGはHEICに比べ情報量が多く、ファイル容量が巨大です。
1枚の写真の容量は、25MB〜35MB。
Apple ProRAWの登場で、iPhoneやiCloudの容量がこれまで以上に圧迫されそうです。
Apple ProRAWでの撮り方
ではここから、実際にApple ProRAWの撮り方について解説していきます。
前提として、このファイル形式で写真を撮るには、iPhone12ProもしくはiPhone12Pro Maxが必要です。
その他の機種では、執筆時現在は対応していません。
Apple ProRAWを使うには、まずiPhoneの設定を以下のようにします。
- iPhoneの設定アプリを開く
- カメラをタップ
- フォーマットをタップ
- Apple ProRAWをオンにする

撮影時にRAWボタンをタップする
Apple ProRAWをオンにしても、標準はHEIC形式です。
撮影する際、画面右上の「RAW」をタップすると、Apple ProRAWでの撮影が可能になります。
もう一度タップすると、HEIC形式に戻ります。

iPhone12Pro系にはレンズが3つ搭載されています。
その中のどのレンズでも、Apple ProRAWの選択が可能です。
iPhoneからMacへ、DNG形式のデータを送るには
Apple ProRAWのデータを、MacのLightroomやPhotoshopで編集できます。
その際、DNG形式のデータをMacへ送るには、工夫が要ります。
iPhoneでApple ProRAWを撮ると、Macの写真アプリへiCloudを通して同期されます。
Macの写真アプリには、外部編集という項目があります。
そこからLightroomやPhotoshopを選べますが、このやり方だと形式が変わってしまいます。

Mac写真アプリの「書き出し」でファイルを取り出す
DNG形式のままLightroomなどで読み込む場合、以下の手順でDNG形式の書き出しを行ないます。
- 写真アプリのファイルメニューから、「書き出し」を選択
- 「1枚の写真の未編集のオリジナルを書き出し」をクリック
- 「書き出す」をクリック
- 指定の場所へDNG形式のデータが書き出される

書き出されたデータをLightroomやPhotoshopで読み込めば、DNG形式のファイルの編集が可能です。
iPhoneからMacへ直接送るには、エアドロップを使う
iPhoneから直接DNG形式のデータをMacへ送るときは、エアドロップを使います。
Lightroomなどでの編集が前提なら、このほうが楽かもしれません。
写真アプリでの編集のやり方
Macには、写真アプリがプリインストールされています。
サードパーティの写真編集ソフトを使わずとも、これで明るさや色などを編集できます。
データはiPhoneからiCloudを通し自動同期されるので、アドビソフトを使うよりデータの扱いが簡単です。
「編集」を押して作業をスタートする
ではここからは、Macの写真アプリを使った編集方法を解説します。
Macの写真アプリを開くと、Apple ProRAWで撮った写真には、右上に「RAW」の文字がつきます。
まずは「RAW」のついた編集したい写真を選び、ダブルクリックします。
右上の「編集」をクリックすると右カラムに操作画面が現れます。
右カラムの操作画面を使って、写真の編集を行います。
項目の数がそれほど多くないので、上から順番にざっとご紹介します。
なおすべての項目は、それぞれの右上にあるチェックマークをオフにすると、その編集が反映されなくなります。
このチェックマークは、操作によって画像がどのように変わったか確認する際にも使えます。
ライト
いちばん上のライトでは、写真の明るさを調節できます。
オプションをクリックすると、明るい部分(ハイライト)と暗い部分(シャドウ)など、それぞれの調整を細かく行なえます。
カラー
カラーは、写真の彩度を調節できます。
オプションをクリックすると、色飽和しないで彩度を調節できる「自然な彩度」を選択できます。
白黒
白黒は、写真をモノトーンに加工できます。
オプションを開くと、コントラストや階調を調節できます。
感覚的に操作できるので、スライドで自分好みに簡単に調整できます。
「やっぱり白黒はやめとこう」と思ったら、項目右上のチェックマークをオフにすればこの効果は反映されなくなります。
レタッチ
レタッチは、写真上をドラッグして不必要な物体を消すことができます。
ただ大きいものを一度に消すと、どうしても違和感がでます。
消したいものがあるときはサイズを小さめにして、少しずつ消すのがよいと思います。
ホワイトバランス
ホワイトバランスは、3つのモードから調整できます。
中間グレイは、寒色か暖色かをざっくり調整できます。
スキントーンはその名の通り、肌の色の調整です。
色温度/色合いは、青と黄、緑と赤を調整できます。
カーブ
カーブは、光の量をグラフの線で調整できます。
RGBはすべての光の調整、プルダウンメニューで赤・緑・青のそれぞれの調整を個別に行えます。
レベル
レベルもカーブと同じく、明るさを調整できます。
左が暗い領域で、右が明るい領域です。
グラフ下のスライダーを動かすことで、それぞれの領域の光を細かく調整できます。
精細度
精細度を調整すると、画像が明瞭になります。
明暗差の少ない写真に適用すると、パキッとした仕上がりへと調整できます。
カラーごとの調整
文字通り、色別の「色相・彩度・輝度」を調整できます。
青空の色をイメージに近づけたいときなど、特定の色を調整するときに役立ちます。
ノイズ除去
暗い場所で撮影したり、暗い部分を無理に明るくしたりすると、写真にノイズが多く出てきます。
それらノイズを除去できる機能です。
適用しすぎると、被写体の輪郭が損なわれます。
シャープ
暗所で撮影をしたりノイズ除去で輪郭が損なわれた場合、シャープで輪郭をはっきりできます。
適用しすぎるとノイズが発生したり、不自然な写真になったりするので注意が必要です。
ビネット
古いカメラを使用したときに発生する、四隅がほんのり暗くなる部分(ビネット)を調整できます。
iPhoneのカメラにビネットは発生しませんが、逆にビネットを加えることでヴィンテージ感のある作風に仕上げられます。
調整をリセット・オリジナルに戻す
編集したあと初期のデータに戻したいときは、調整パネルの「調整をリセット」もしくは上部左の「オリジナルに戻す」で初期値に戻せます。
ちなみにこれらのボタンをクリックしたあと、再び編集途中の状態にはできません。
ビフォーアフターを比較
編集していると、オリジナル画像との変化を確認したくなります。
そのときは左上のボタンをクリックすると、編集前と後の変化を比較できます。
トリミングと角度調節
画像のトリミングや角度の調節は、上部中央の「切り取り」をクリックします。
トリミングは写真のフチをドラッグすれば、好きな形にできます。
縦横比を維持したままトリミングする場合は、シフトキーを押しながらドラッグします。
角度調節は、右のダイヤルを上下にドラッグして行います。
書き出しのやり方
編集後に書き出したいときは、以下の手順で行ないます。
- 写真を選択後に「ファイル」から「書き出し」をクリック
- 「1枚の写真を書き出す」をクリック
- ポップアップの「写真の種類」からJPG、TIFF、PNGのいずれかを選択
- 右下の「書き出す」をクリック

JPGへの簡単な書き出し方
写真をデスクトップなどへドラッグすれば、JPGデータとして書き出されます。
書き出すのがJPGと決まっている場合は、これがいちばん簡単です。
Macの写真アプリはそれなりに使える
Macの写真アプリの機能は、アドビのLightroomやPhotoshopと比べると最低限といったところです。
ただ写真ソフトがなかったり、iPhoneからすぐ色や明るさのみ調節したい場合には、良い選択になります。
Macの写真アプリで編集すると、iCloudで同期してiPhoneの写真も編集後の状態に変わります。
編集後にiPhoneからSNSへ投稿したいときには、とても便利です。
実際にApple ProRAWで編集してみた
実際にApple ProRAWで撮った写真を、Macの写真アプリで編集してみました。
上が編集前のRAWデータ、下が編集後です。


Apple ProRAWはカメラ内で自動編集されていませんから、編集前のRAWデータはメリハリのない眠い画像です。
写真アプリで全体を明るくし、少しメリハリを持たせつつ、ハイライトを抑えてシャドウを持ち上げました。
色を寒色よりに少し調整しました。
Apple ProRAWは画像に情報が多く残っているため、階調が豊かに編集ができると実感しました。
まとめ
以上、Apple ProRAWと写真アプリの解説でした。
Apple ProRAWをひとことで言うと、後処理ができる安心なデータです。
普段のなんでもないスナップ写真なら、HEICで十分です。
ただ、「iPhoneで仕事用のきっちりとした写真撮らなくては」といったときに、Apple ProRAWはより安心できるオプションです。
出版関係や、ブログを含めたウェブメディアを運営している人にとって、使える機能だと思います。
Apple ProRAWの登場で、iPhoneが一層クリエイター向けのデバイスになったと思いました。
iPhone12Pro Maxの紹介は、以下をどうぞ
iPhone12Pro Maxは、iPhone12Proよりもカメラ機能が優れています。
以下の記事で、iPhone12Pro Maxのレビューをしています。