年末なので、ためになることを

2013-12-31 16:54

今年も残り7時間ほどです。今年最後の更新なので、ためになる情報を書こうと思います。

 

2013年は、年間60冊の本を読むことを目標にしていました。ひと月で5冊の計算です。夏までは順調にきていましたが、秋から急に時間がとれなくなってしまい失速。結局、今日の大晦日までで読了は51冊でした。で、ためになる情報というのは、今年最後に読んだ本がとても素晴らしかったのでその紹介です。

 

タイトル:諦める力
著者:為末大
Kindle版が年末年始セールで500円です。

 

題名の通り、「諦める」ことについて書かれています。著者は、陸上競技400メートルハードルの選手だった為末大です。為末さんは、陸上をはじめた中学生の頃、短距離の100メートルで勝負しようとがんばっていました。しかし高校生になると記録が伸び悩み始め、ある大会がきっかけで集中する種目を400メートルハードルに切り替えます。その結果、引退するまでに世界陸上で銅メダル2個を獲得しました。100メートルにこだわっていたら、メダルを穫ることできなかっただろうと語ります。

 

注目度で言えば100メートルと400メートルハードルでは、雲泥の差があります。もちろん、100メートルのほうが上です。なので競技を変えることに葛藤があったそうです。挫折と言い換えてもいいでしょう。しかし為末さんは、次のような思考で自分の決断をポジティブなものへと変えていきます。

 

「陸上界で最も勝ちにくい100メートルを諦めて、僕にとって勝ちやすい400メートルハードルにフィールドを変えたのは、僕が最も執着する勝利という目的を達成するために必要だった」

 

これはとても響いた言葉です。生きる上で一番貴重な資源は、「時間」です。何かを選べば、それ以外のものは選べなくなります。例えば「来年100時間かけて英会話を習得しよう」と考えれば、英会話に費やす100時間という資源は、それ以外のことに使うことができません。時間と行動は常にトレードオフの関係にあります。なので、自分は何を目的とし、そのために時間を何にどれだけ使うのか、と考えて行動することがとても大切になってきます。

 

しかしここで大きな問題が出てきます。人間はすべての行動を合理的にすることはできないのです。人間は往々にして、投入した時間や費用を回収したい思いに駆られます。先ほどの英会話の例で言えば、最初の30時間ほどで自分にはそもそも語学センスがまったくなく、他の人に比べて上達速度がかなり遅いと気づいたとします。つまり客観的に見て、根本的に向いてないということですね。だとしても、「もう30時間も使ってしまったのだから、教材に00万円使ってしまったのだから」とすっぱりとやめてしまうことができません。

 

また、趣味の分野であればいざしらず、例えばこれが仕事になるとそこに世間体の問題が加わります。「向いていない」と気づいても、世間、特に日本では「向いていなくても時間を掛けて頑張る」人を評価し、「自分には他に向いている仕事があるかも」と転職を繰り返す人を評価しない傾向にあります。本書ではそれを、「オリンピックの選考に選ばれる可能性はまったくないにもかかわらず、引き際を誤り、取り返しの付かない人生を送ることになるアスリートたち」の例を紹介して解説しています。

 

そこで題名にもある「諦める力」が登場します。本書では、経済学の埋没費用(サンク・コスト)を引き合いにとてもわかりやすく解説している部分があります。書いてある例をそのまま引き合いに出しますが、1800円を支払って映画館に入り開始30分でその映画(上映2時間)がつまらないことがわかったとします。おそらくほとんどの人は「1800円がもったいないから」とそのまま映画を見続けるでしょう。それからの1時間30分はまったく無為な時間になってしまうわけですが、もしそこで映画館を出ることができれば、有意義に使える可能性が生まれます。

 

「向いていない仕事だけど、自分はこれが好きだから続けていこう」といった考えで続けるのならよいのですが、「向いていない仕事だけどすぐにやめるのは恥ずかしいからもう少し続けよう」という考えで続けるのはまさにこのサンク・コストにあてはまると思います。向いていないことを我慢してやる時間は、もう一生戻ってきません。それよりも勇気を出して諦めて、向いていること、力を発揮できることに時間という資源を使ったほうが遥かに自分自身のためになります。

 

「諦める力」は柔らかい語り口と少しずつ積み上げていくロジックで、「勝つためにすべきこと」「損切りできないことの不合理」を指摘します。とても良書でした。

 

本というのは、掛けるコストに対するリターンがかなり大きいものだと思います。1000円や2000円ほどで個人的な気づきをこれほどたくさん得られるものはないです。来年は意識して読書量をもっと増やしたいと思っています。では良いお年を!

 


Category:映画・音楽・本

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