香港一人旅 1-10 夜の食堂

2015-02-15 15:14

香港の旅行記の10回目です。

 

1〜9回目は香港一人旅 archivesからどうぞ。

 

* *

 

外に出かけて食事をしようと考えたが、英語のやり取りがうまくいかないと嫌だなと腰が重くなる。といっても、日本語の通じるところを探したりファーストフードばかり食べる訳にはいかない。チャレンジする気がないのなら、そもそも海外にノコノコやってくるなという話である。

 

重い腰を上げて外にでる。すでに夜の9時を回っていたが日本の春先のように空気は暖かく、また梅雨時のように湿度があった。

 

裏通りをしばらく歩くと、庶民的な食堂が煌々と明かりを灯していた。日本にある中華チェーン王将を小汚くしたような雰囲気である。店内には仕事が終わったらしいサラリーマンたちが皿をつついていた。日焼けしたメニュー表が外の壁に貼りだされている。店の雰囲気と同じように、その値段はどれもが20ドル〜30ドルとお安いものばかりだった。

 

一日歩きまわって、またこれからレストランを探しまわるのはご遠慮いただきたいと思っていたので、汚いとはいえリーズナブルなこの店に入ってみることにする。

 

日本と同じような感覚で店員に誘導されるのを待っていると、「ここに座れ」とばかりに入り口から一番近い席を指さされた。日本は自分を含めて消費者がかなり神経質なのでサービスの質は高い。日本と同じ感覚でおもてなしを受ける心づもりで受け身でいると、香港では損をすることが多いと感じる。この時も、勝手に良さ気な席に座ったほうが良かったのであろう。店員の誘導に任せれば、店員にとって都合のいいサービスが提供されることとなるのだ。

 

ともかくオーダーを取りに来た若い男性店員に、メニューの一つを指さし、“This one”と注文する。「麺」と「肉」という漢字が見えたので肉の入ったソバであろうと推測する。すると店員が広東語でなにやら話してくる。もちろん何を話しているのかまったくわからない。英語でも何も言葉が出ずにホテルのロビーと同じく硬直状態になっていると、フロアを取り仕切っている威勢のいいおばはんがすっ飛んできた。

 

若い男性店員を向こうへ押しやって、“English OK?”と聞いてくる。もはや風前の灯となっている我が英語力であったが、“a little.”と答える。するとおばはんは僕が持っていたメニューをひったくり、代わりのメニュー表を差し出してきた。英語版のメニューらしく、漢字の下に英語表記が書いてある。それを見てみると、どうやらさっき注文したのは時間外メニューであるらしかった。なるほどと思いながら、その中からまたもや「麺」と「肉」の文字が書かれている一品を選んだ。

 

おばはんは「わかった」という風情で頷いた後に、「7ドル足せばドリンクが付くぞ」とセールスしてくる。7ドルといえば日本円で約105円。まあそのくらいいいかと思って“OK.Tea please.”とお茶を注文する。「レモンティーか?アイスレモンティーでいいだろ?」と強引に人の飲みたいものを決めつけてくるおばはん。烏龍茶的なやつを欲しかったのだが、面倒だったので「それでいい」と答えた。まったく、食事するのも一苦労である。

 

しばらく待っていると、麺とアイスレモンティーが運ばれてきた。麺は即席麺を「ただいまほぐしてまいりました!」と言わんばかりにバリ硬であったが、おいしかった。具の肉は油で揚げた豚肉だった。これも柔らかくておいしい。レモンティーは、まあごく普通のやつではあったがともかく甘かった。南国に近づいているから甘党なのだろうか。もったいないので、全部飲み干す。

 

さてお会計となっておばはんが立ちはだかる出口近くの会計場所へと向かう。伝票には、45の文字。45ドルという意味なのだろう。小銭が溜まっていたので処理しようと、手のひらに何枚かのコインを乗せる。「50」と書かれた硬貨があったのでこれでよかろうと渡すと、“No!!!!!”とおばはん大激怒である。なんだ間違っているのか、とコインは諦めて慌てて100ドル紙幣を手渡す。50ドル紙幣と5ドルコインがお釣りとして戻ってきた。

 

その後、おばはんは、「いいか?45ドルの代金なので、100ドルをもらい55ドルをお前に戻した。文句ある?」というようなことを言ってくる。もちろん文句などない。“No problem.”と返事して店を後にした。

 

改めてコインに書いてあった文字を確かめてみる。50と書かれていたのは50ドルではなく、50セントであった。そりゃ怒られるわ、と思いながらホテルへの帰り道を歩いた。(続く:もう一回だけ一日目が続きます)

 


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