人生がときめく片付けの魔法とスティーブ・ジョブズ

2010年に発行された大ベストセラーに、近藤麻理恵さん著の「人生がときめく片付けの魔法」がある。

売れ出してからメディアにも出まくっていたのでご存じの方もたくさんいると思う。自分も読んではいなかったがなんとなく本の内容は知っていた。「ときめくかどうか」ですべてを判断するというのがとても乙女な思考だと思った覚えがある。

その近藤麻理恵さんが、アメリカ「TIME」で毎年選出されている「“TIME 100”世界で最も影響力のある100人」の15年度版に選ばれた。

日本人は村上春樹さんと近藤麻理恵さんの2人だけである。リンクを読んでもらうとわかるが、「ときめき」は“spark joy”と訳されている。

どういった基準で選考を行っているのかまったくもって知らないが、アメリカ人にとってもこの作者は有名なようだ。

片付けとか整理整頓というのは神経質できれい好きな日本人特有の性質だと思われるが、その特徴が世界の琴線に触れたのである。

この本を読みながら「何か似たような内容の本を読んだなー」と既視感をずっと持つことになった。

何かなと考えていたら、先日ブログでも紹介した「エッセンシャル思考」という本にとてもよく似ているのだった。表現の仕方が違うだけで、どちらの本も「自分にとって大切なものだけに囲まれて生きていこう」というのがテーマなのである。

「エッセンシャル思考」は、自分にとって本質となるものだけを大切にしそれ以外は捨てていけ、という本だった。

それはモノだけに収まらず、仕事も人間関係もあらゆるものに対して行ない人生を「より少なく、しかしより良く」していくことを目標にしていた。

かたや「人生がときめく片付けの魔法」の場合。その対象は所有しているモノだけに限られるのだが、自分にとって大切な物だけに囲まれて生きていこうと訴えている点は同じである。

更に一番の特徴は、キーワードに「ときめき」という単語を選んでいるところだ。

改めて、ときめきとは何だろうか。

それは考えるだけで胸が高まったり気分が高揚したりする“肉体的な感覚を伴った”とてもポジティブなキラキラしたイメージのものだ。“spark joy”という訳は言い得て妙である。

「エッセンシャル(本質)」と言われるとまあ「ごもっとも」と思いつつ「では自分にとっての本質とはなんだ?」と思考を巡らせる必要性が出てくる。本を読んだ後に深く考えた人はおそらく少数だろう。

しかし、「モノを触ってときめくかどうか」という肉体的感覚的な基準は実行しやすい。あれこれ考えずとも、触れた時の自分の心にただ正直になればいいのである。

そういった実際的で即効性のある部分がこれほど大ヒットした要因なのではと思った。「ときめき」というワードに紐付ければ、片付けに限ることなく自分にまつわる色々な物事をよりよくできそうである。

そういう意味では、Appleのスティーブ・ジョブズという人は、自分がときめくかどうかだけを基準に生きていたのではと思う。

気に入った(ときめく)ものを選べないという理由で一時期、部屋の中に家具がまったくなかったというのは有名な話だ。製品の見た目や触感に対する執拗なこだわりも人一倍ときめきに対して敏感だったからだろう。

もしジョブズが生きていたら「TIME」が選ぶ100人に確実に選ばれていただろう。

「他にどんな奴が選ばれたんだ?」と残りの99人に目を通し、近藤麻理恵さんの「ときめきに関する話」を聞いて「自分が言いたいのはまさにそれだよ、マリエ!」と興奮していたかもしれない。