書店を脅かしているものは何か

先日、友達と話をしていたら書店の話になった。大型店の撤退や合併、閉店などが目立ってきているので、やっぱり書店経営は厳しいのかなと。自分は書店に勤めていた経験があるので、そういった事情がまったくわからないというわけではない。なのでその時に思ったこととして、Amazonや電子書籍に押されているのではないか、といったことを話した。

友達と別れてから自分の言ったことを思い返してみて、この回答は、表面的な状況を拾ってさもそれらしい理由づけをしていたに過ぎないなと思った。Amazonや電子書籍というのは書店にとって、本や雑誌を売るチャネルとしての脅威ではあると思うけれど、それが原因だとすれば出版不況におちいっている説明がつかない。書店だけが売り上げを落とすことになり、出版社に影響は出ないはずだ。しかし、実際は本と雑誌の売り上げそのものが急速に落ちているのである。

つまり消費者が本屋で買わないようになったのではなく、本や雑誌自体を買わなくなっているのだ。書店にとっての一番の競合とはAmazonや電子書籍ではなく、消費者から本や雑誌を読む時間を奪っている何かなのだ。

その答えはもう歴然としていて、スマートフォン以外にありえない。スマートフォン登場以前であれば、隙間時間に手にするものといえば本だった。カフェにいったとしても、どこかの書店のブックカバーをつけた単行本や文庫本を片手にしている人が大勢いた。それが今では大部分の人がカフェでも電車でもスマートフォンの画面を見ている。

雑誌にしてもそうである。コンビニに行ったついでになんとなくおもしろそうと感じた雑誌を、深く考えずに買った経験はないだろうか。今では自分の場合、コンビニの雑誌コーナーで足を止めること自体がなくなってしまった。ネット上には雑誌に取って代わる記事がいくらでもあるのだ。特に今はニュースアプリが盛況なので、ニュースだけでなく自分の興味があるコラムなどもアプリを通して簡単に探しだすことができる。

おそらく、スマートフォンの出現で活字に触れる機会は急増したと思う。しかしそれと反比例して書籍からは手が遠のいてしまっているのだ。

高性能なコンピュータを搭載したスマートフォンは、様々な物の価値を奪ってしまった。わかりやすいところで言えばコンデジがそうだし、カーナビ、辞書、紙の書類全般。音楽もCDを買わずともYouTubeから無料で聴くことができる。CDに色々な特典をつけるのは賛否あるだろうが、そういった付加価値をつけるようになるのは生存戦略としての合理的な選択なのである。

ただ、スマートフォンがそれこそ先進国の人全員に行き渡りはじめ、踊り場に来ている感があるのは事実。また通知機能を備えたウェアラブルの普及も広がるだろうから、これからは徐々にスマホ離れが始まるかもしれない。ポケットやバッグには絶えず入れていても、実際に画面を見る頻度はどんどんと減っていく可能性がある。

スマホ離れの現象が出てくればその揺り戻しで、また書籍を手に取るようになるかもしれない。…というのは楽観的すぎるけども、本というもの自体が好きな自分としては、なんとかこれからも良質な本が出続けて欲しいと思う次第である。

Pocket

Scroll to top