書店の椅子は必要か?

書店が今の業態のままで進むとしたらその未来は暗いとしかいいようがない。ひょっとしたら電子化のスピードが加速度的に早まって、3年くらいで今の売上が半分に縮小してしまうかもしれない。

出版社と手を組みAmazonや電子化に対抗手段を取るといった防御的な施策が目につくが、それは根本的な解決にはなりえない。

Amazonや電子書籍は市場から選ばれているから成長しているのである。書店自らが市場に選ばれるような新しいサービスを提供できないと、CDショップと同じように業界自体が一気にシュリンクしてしまう可能性が大きい。

売上を上げるための施策には今書いた「新しいサービスを作る」というような大きなものもあれば、今日から実施できる小さなものもある。今から書くのは小さな施策となるのだが、これをやれば売上は上がるだろうという簡単な方法がある。それは閲覧用の椅子を撤去することである。

昔は書店に椅子など設置されていなかった。それがいつの間にか、あるのが当たり前となっている。しかし当たり前と思って思考停止になっていないだろうか。僕は売上を優先に考えるなら不要なものだと思っている。

本屋の椅子というのは何のために置いてあるのだろう。それは、「ゆっくりと本を読んでもらうため」である。

あれれ、ちょっとおかしいぞ。本屋は図書館ではないのだ。本を買うための場所なのだ。本来「ゆっくり本を読む」という行為は本を購入して、自宅でやってもらうべきものなのである。

本屋の椅子に座って本を読んだことは誰しも経験があると思う。そこで聞きたいのだが、椅子に座って中身をじっくりと読んだ後に、その本を持ってレジに行くだろうか?

僕は買った試しがない。腰掛けてじっくりと目を通した時点で、対価に対する価値がかなり(場合によってはほとんど)目減りしてしまうからだ。

つまり本屋の椅子というのは、わざわざ商品の価値を下げるために存在しているのなのである。

なので椅子をなくすことにより、「座って読んだ後に買うのをやめた」そんな売り上げを取り戻せるのが大きい。単純にこれだけで売上増になると思う。

では椅子を撤去することによるマイナス要素には何があるか。

当然のことながら「本を読むためだけに来ている層」の足は遠のくだろう。しかしその層が普段からその店で本をよく買っているとは考えにくい。

むしろ立ち読みをするようになって、長時間は辛いからと購入するボリュームの層へ移行してくれるかもしれない。

買わないでも店の中にいるだけで「賑やかし」になる、そんな小売店の論理もあるだろうが、本屋というのは内容も体裁も価格も同じという性質の商品を扱っている。

近所の小さい本屋で買えば100ページでモノクロのものしか買えないけど、紀伊國屋書店なら200ページでフルカラーが買える、というわけではないのだ。全国のどの書店で買おうが、同じ商品が同じ価格で買えるのである。

であるなら、椅子に座って読んでいる人がたくさんいようが、賑やかであろうがなかろうが、その店へ来店する動機としてそれらは左右されない。書店を選ぶ理由は、場所・蔵書数・営業時間である。

どこかの大型店で、実験的に椅子の撤去を行わないだろうか。ひと月ぐらい様子を見てみて、売り上げがどのように推移するか知りたいところだ。

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