コスパを短期的な視点と長期的な視点で考える

コスパ(コストパフォーマンス)を考えるのが好きである。「今やっていること、今やろうとしていることが、支払う金額に見合うだけのリターンがあるか」、そういうことを日常の細かいことでも無意識に考えている。

コスパのおもしろいところは、そこには短期的な視座と長期的な視座があるという点だ。例えばスポーツジムというのがある。月額の料金を支払えば施設の器具を使えるようになるという種類のものだが、人によっては身体を動かすためにお金を払うのはもったいない(コスパが悪い)と考える人もいるだろう。例えば会員料が月額10,000円掛かるとすれば「そこに毎月10,000円を払う価値があるか」を考えるのが短期的な視座になる。

しかし人生というのはひと月で終わるわけではなくて(いつ途切れてしまうのかはわからないけれど)、平均寿命的には70歳ぐらいまでは生きることになる。ジムに通わずに身体を動かすこともなく70歳まで生きれば、足腰が弱って歩くのも難儀な身体になっているかもしれない。病気がちな身体になっているかもしれない。

そうすると、若いときにきちんと健康管理をして適度な運動をしていた人よりも、医療費や介護費が余分に掛かることとなる。身体が健康であれば仕事をして収入を得られるところ、それすらも失うことになるだろう。このようにスポーツジムをこの先数十年という長期的な視点で考えてみると、会員料を節約して通わずにいれば、それ以上の対価を将来支払う可能性が出てくるのである。

他にもクーラーというものがある。クーラーというのはご存知の通り、スイッチを入れれば部屋や車の中を冷やしてくれるとても便利なものなのだが、家電なのでもちろん電気代が掛かる。なので人によって、または会社によっては「我慢してなるべく点けないでおこう」とするところもあるだろう。

しかしそうやって我慢して節約できる電気代ってどのくらいだろうか。例えばひと夏我慢することで10,000円を節約できたとしても、会社であればその期間は蒸し暑い不快な環境で働くこととなる。不快な環境であれば当然生産性は落ちる。事務所に複数の人間がいるのなら、生産性が落ちた結果の損害は10,000円など軽く越えるだろう。

家庭であってもクーラーを我慢することで熱中症にかかれば、その治療費や仕事を休むことで収入が減る分であっという間に相殺されてしまう。短期的に見ればクーラーを我慢することで電気代を抑えられるが、長期的な視座に立てば我慢することで生じる損害のほうが大きいのだ。

コスパを考える際には、短期的な視点だけでなく長期的な視点も意識して持つようにしたい。


金沢在住のフリーランス・ライター。2014年より海外への一人旅をはじめる。これまでに訪れた国は16カ国。旅に使っているカメラは、2016年秋に亡くなった写真家の伯父・富岡省三氏のHasselblad 500C/M。