台湾一人旅 3-2 食堂で師走を想う

2016-01-14 8:02

台湾旅行記の23回目です。

 

終点の淡水駅で電車を降り、ホームから出口へ向かう下りエスカレーターに乗った。駅を出ると、左手には大きな河川が見えた。右手の先には人通りのある道路が見える。右手は商店街のようである。

 

ホテルでゆっくりと今日のコースを調べてから外に出たので、淡水に着いた時刻は午前11時ごろだった。お腹が多少空いてきていたのでどこか開いている飲食店があれば入ろうと考え、まずは右手の商店街へ行くことにした。

 

飲食店や屋台がたくさんみられ、観光客が多く来る土地なので土産物屋も多い。日本で言えば鎌倉や湘南の雰囲気に近いかもしれない。日曜日ともなればこの商店街の道や河沿いの歩道は数多くの観光客でいっぱいになるそうである。

 

 

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商店街を奥へと歩いて行くと、美味しいものを出してくれそうな雰囲気の良い食堂を見つけた。台湾スタイルの店先に備えてある厨房では、30代前半くらいのメガネを掛けたお兄さんが、いくつものコンロに火を掛けて慌ただしく仕込みを行っている。

 

厨房の前に貼り出されているメニューを見てみると、「牛肉」「麺」という漢字の書かれた一品が大きく書いてある。おそらく牛肉麺がこの店の売りなのであろう。

 

牛肉麺は初めての経験だが牛筋麺は香港で食べた経験がある。テールで出汁を取った深みのある味で美味しかった。ここでまずは腹ごしらえをしようと厨房のお兄さんに、「入っていいか?」と人差し指を店内へ示しながらジェスチャーをしてみる。

 

するとお兄さんは何やら中国語で色々と話してきた後に、“OK.”と中へ入るように言った。何を話しているのかわからなかったが、注文票を渡してくれなかったことと、メニュー名らしきものを連呼していたことから、おそらくは「まだ準備が整っていないので一品しか出すことができない」みたいな内容を話していたと予測する。

 

どういうメニューがあるのかわからないので一品だけでも全然構わないのだが、願わくばそれが牛肉麺であることを期待しつつ、店内の椅子に座りしばし待つことにする。

 

店の中は、戦後から復興したばかりの日本の地方都市の食堂といった風情。まあはっきり言えばこ汚い感じだ。しかしそれはおそらく、日本の衛生的な店内に慣れきっているからそう感じるだけだろう。台湾のどこの食堂も一様に店内の意匠や美化には無頓着なようである。台湾にしばらく暮らしていれば、日本のキレイ過ぎる飲食店に違和感を持つようになるかもしれない。

 

店内に客は僕一人である。外の通りをぼんやりと見ていると、日が高くなってきたからか、商店街を歩く人の数も増えてきていた。

 

今日は2015年12月17日。もう年末と呼んで相応しい時季だ。例年であれば年賀状やお年玉を準備したり、年内に仕上げる仕事に追われたりして、日本で無事その年が終わることを何の疑問も持たずに過ごしていた。

 

それが今年は思いついたように台湾へ突然行くことにして、師走の街並みの喧騒を台北の北部にある淡水という地域の食堂から眺めている。今の状況は去年の年末に想像できなかったことだ。

 

であるならば、来年の今、自分がどこで何をしているかも(ある程度の予測は可能にしろ)わからないということである。未来のほとんどの出来事は、自分でコントロールすることができないのだ。自分が取る未来の選択でさえ、予想することが不可能なのだ。だったら将来を不安がるよりも、何よりも目の前に起こっている現実を楽しもう。

 

そんな使い古された言葉の数々が、食堂にぼんやりとたたずんでいる自分の胸の中へと入ってきていた。異国の街の食堂で一人ぽつんと座っていたため、感傷的な気分になったのかもしれない。(続く)

 


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