固定費がどんどん増えていく時代になった

旧聞だけれども、アマゾンが4月6日に送料無料サービスの改定を発表した。

これまでアマゾンが発送する商品はすべて送料無料、もしくは粗利の低いものは合わせ買い2,000円以上で出荷するとしていたところ、2,000円未満のすべての商品が350円(税込)掛かることとなる。

記事を読んでもらえるとわかるが、プライム会員はこれまで通りの送料無料サービスを受けられることとなっている。

この施策の狙いははっきりしていて、アマゾンとしてはとにかくプライム会員の会員数をアップさせたいのだ。

プライム会員になっている人はおわかりだろうが、お急ぎ便無料のほか、音楽や映画が聴き放題・観放題だったり、画像と動画の無制限クラウドストレージを利用できたりと、年額3,900円のプライム会員になればたくさんのサービスを享受できる。

アマゾンをよく利用するなら、入っておかないと損になるサービスだ。

アマゾンにしてみればこのプライム会員というのはスポーツジムの月会費と一緒で、間接費の投入だけで粗利は丸々残る計算となる。

色々なサービスを投入しても会員が増えれば元は十分にとれる算段なのである。

極端な話、設備投資をまったくしない年があったとすれば、年間100人会員が増えればそのまま390,000円の純利益が残る計算となる。

もちろん設備投資や間接費、会員数増加によるインフラ整備など、経費は必ず掛かるので純利益100%とはいかないだろうが、会員制のビジネスというのはそれだけ旨味が多いのである。

なので、ウェブサービスでは無料で体験させて、月会費の掛かる有料プランへステージアップを狙うのが一般的な施策となっている。

アップルミュージックなどはそのわかりやすい例である。最初の3ヶ月はお試しで無料だが、その後は利用するのに月額980円が掛かる。

iPhoneを買った人のどのくらいがアップルミュージックの有料会員になるかわからないが、とりあえず10%と仮定して計算してみると…。

iPhoneの前年の出荷台数が1473万台。買い換えないで旧モデルを使っている人もいれば二台持ちの人もいるだろうから、行って来いでこのままの台数が使われていると仮定すれば、1473万の10%で、147万3000台の人がアップルミュージックを使っている計算となる。

月額980円だから、147万3000 × 980 = 144,354万

月に1億4千5百万円が直接費のほとんどかからない収益として、Appleの元へと入ってくることとなるのだ。

こう考えると、やはり会員制のビジネスは軌道に乗ると大きい。

特にウェブの場合はインフラになる可能性があるので、一度そのサービスを使いはじめると辞めるにやめられないということになる。

アマゾンのプライム会員などは自分にとってその顕著なもので、もはや通常会員になるという選択は自分の中ではあり得ない。おそらく死ぬまでの間、アマゾンに年会費を払い続けるのだろう。

しかしここまで月額や年額の掛かるものが増えてくると、消費者にとっては固定費がどんどん積算していくことになってしまう。

「月額1000円程度ならいいか」と新しいサービスを選択すればするほど、毎月必ずなくなるお金の総和が知らずに大きくなっていくのだ。

例えばアドビのクリエイティブクラウドなど、仕事上どうしても必要なサービスはある。なのでそういったサービスのすべてを辞めて固定費を抑えるというのは現実的ではない。

その代わり、「自分にとって会員制サービスに払う上限はこのくらい」と、月の費用を定めておけば膨れ上がる一方の固定費に歯止めを掛けられそうである。

そうして固定費の量を自分でコントロールしていかないと、収入の何割もがサービス使用料で占められる…といったことにもなりかねない。

知らないうちに、おそろしい時代へと入っている。


金沢在住のフリーランス・ライター。2014年より海外への一人旅をはじめる。これまでに訪れた国は16カ国。旅に使っているカメラは、2016年秋に亡くなった写真家の伯父・富岡省三氏のHasselblad 500C/M。