目を向けるべきは「市場」

モノを作る上で非常に重要になるのが、「どこにゴールを設定するか」だと思っている。

もうちょっとくだけた表現をすれば、「誰の目を気にして作っているか?」ということになる。

自分自身を表現するアーティストは別として、商業ベースにのるようなモノを制作する際には
発注者がいたり、それを購入する人がいたり、サービスを受ける人がいたりする。

その中でも広告系の仕事に関して言えば、よくやりがちな罠として思うのが、「クライアントの目を気にして作る」ということがあると思う。

クライアントというのは出版社であったり代理店であったり、個人商店、大企業、中小企業と様々。

実際の発注者となる彼らクライアントの意向に沿う(顔色を見る)というのが、ついやってしまいがちなことである。

それはそうである。

いくら自分がいいと思っても、発注者が気に入らなければ何度でもやり直しになる。

「『やり辛いやつだ』と思われれば、次のお声が掛からないのでは」といらぬ想像をして指示をそのまま聞いてしまう。

しかし、クライアントの意向に沿うことでいくつかの問題も起こる。そのことを整理してみる。

1 人の考えていることはわからない

そもそもの話なのだが、クライアントの意向に沿うといっても、結局は自分とは別の人間なので本当のところ何を思っているかはわからない。

「あの課長さんはピンク色が好みだったはず」と想像しながら色を選択しても、「こんな淡いピンクは一番嫌いなんだよなー」と言われるかもしれない。

その会社や媒体のカラーがあるので、意向を100%無視するというのはあり得ないけど、発注者の考えを想像してそれに沿って作るというのは元来無理のある話なのだ。

2 作っていて迷いが生じる

「自分がこれがいい」と思って作るのではなく、「こう言われたから」とか「これが好みだから」と考えながら手を動かすと、作っていて迷いが生じる。

1のところで書いたように、人の考えはわからないのだ。

迷いながら作っても良い物は絶対に生まれない。作った背景に一本筋の通ったストーリーがないと共感を生むことはできない。

3 審判は市場がくだす

何回もリテイクを求められて迷いながら作ったとしても、その結果に最終的な判断をくだすのは他でもない「市場」である。

考えてみればわかることなのだが、クライアントの言う通りにしか作らないクリエイターとクライアントと対立しがちになるけれども、市場からの評価は得られるクリエイターではどちらが優れているだろうか。

もちろん前述した通り、その媒体や会社のカラーがあるので、ブランディングに沿うという意味でクライアントの気持ちには寄り添うべきだと思う。

しかしそれをやり過ぎて市場から評価されないものを作ってもしょうがない。

何を言いたいかというと、「どこにゴールを設定するべきか」これは原則として市場なのだ。

制作過程で色々なことが起こって、翻弄されることもあるかもしれないが、「常に市場へと目標を向ける」そのことをベースにしておけば、おかしな方向へはいかないはずである。

「市場」は目に見え手に取れるようなはっきりしたものではないだけに、つい忘れがちになるけれども、備忘録として書いておいた。