親指シフト習得までのお話

2016-04-25 8:26

キーボードの入力方法には「ローマ字打ち」と「かな打ち」の二種類がある。このうち、ほとんどの人が使っているのはローマ字打ちだと思われる。自分もある日まではローマ字打ちで入力していた。

しかしローマ字打ちよりも速く打てる打鍵方法があることを知り、スイッチすることにした。親指シフトがそれである。

親指シフトとは、富士通が考案したキー配列による打鍵法のことである。常に両親指はシフトキーに置いたままにして、ホームポジションに置いた残り8本の指で文字を打つ。

今はAppleのMagic Keyboardを使っているが、このキーボードの場合は、左親指を「英数」キーに。右親指を「かな」キーに置いている。

もちろん残りの8本だけだとすべての文字は賄えないので、左右シフトキーとの同時打ちで50音だけでなく濁音半濁音もを打っていく。

子音を打つために2つ以上のキーを必要とするローマ字打ちに比べ、打鍵するキーの量は60%となる。単純計算すれば、ほぼ倍程度の速度で文字を打つことができるのだ。

自分の仕事はライターがメインなので、一日に文字を打つ量は少なくとも3000文字以上は必ずある。時間にして、3時間くらいは執筆に当てているだろうか。それが2時間弱くらいに短縮できるのである。

一日1時間短縮できれば、一年で365時間。習得してしまえば、毎年15日分もの時間を得ることができる。生産性をアップして時間を得たいと考えれば、この打鍵法を習得するのはとても理にかなった選択なのである。

しかし、それまで打ち続けてきた打鍵法をやめて新しいものに変えるというのは、結構根性のいることである。うまく自分にマッチすればいいが、逆に生産性が大幅に落ちる可能性もある。

例えれば、それまでオーバースローで投げていた野球のピッチャーが、サイドスローに変えるようなものである。

そうすることで速度やコントロールが向上するかもしれないけど、それまでに使っていたところとは別の筋肉を使うことになる。

自分に合わなければそこに投資しただけの時間が無駄になるかもしれないし、下手すればオーバースローの投げ方に戻した時に悪影響を及ぼしてしまうかもしれない。

そういう思いもあって、結局はどうしようかと悩みながらスタートをした。一日に15分程度だけ練習をしてみて、自分に合っているか試しながらやってみたのである。

もちろん普段、打鍵するときはローマ字打ちを継続して行なっていた。親指シフトを練習し始めた当初は、キー配列表をみながらまさに一文字一文字を打っているような状態で、15分掛けて打てる量は50文字程度が限界だった。これではまったく仕事には使えない。

最初は実用にまったく適さなかった親指シフトだけど、10日間くらい練習を続けているとキー配列表を見る頻度が減ってきて、まあそれなりには打てるようになってきた。しかし実用にはまだまだほど遠いと考えて、もう20日間くらいコツコツと練習を続けてみた。

そうして1ヶ月くらいすると(ローマ字打ちより速くなりそうな気配は、その時点では正直なかったのだけど)、何となくではあるが親指シフトで文字を打つのが楽しくなってきていた。

15分の練習を続けながら、メールなど親指シフトで打つようにしてみるとだんだんと実用できるくらいの感じにはなってきていた。

「指が覚える」というレベルで言えばローマ字打ちのほうが慣れているのだが、文字を打つことそのものの楽しみは親指シフトのほうが大きいような気がした。

ローマ字に頭の中で変換する必要がないので、思考することと書くことが一致するような感覚があった。親指シフトを覚えた今となって思うのは、そもそも日本語を打つのにわざわざローマ字に置き換えて打つというのは不自然な話なのである。

2ヶ月くらいが経った2014年10月くらいから、ようやく本業の仕事でもすべて親指シフトを使用することにした。

最初の頃はローマ字打ちよりも生産性は落ちていたと思う。

それでも、もうローマ字打ちに戻ろうとは思わなかった。「新しい技術を習得してそれをモノにして生産性を向上する」このこと自体に興味を持ち始めたのだ。文字を打っていても気持ちよかったし、自分が成長していっているのを肌で感じるのがおもしろかったのだ。

そうして2014年8月を境にして、親指シフトを使うようになった。一年と8ヵ月くらいが経ったけれど、変えたことで後悔したことは一日もない。そしてこのことを皮切りにして、「生産性を上げる」ということに対して貪欲にもなった。

「自分の何かを変えれば生産性向上の可能性がある」とすれば、それを行うのに躊躇することがなくなった。変化を恐れる心のブレーキが外れたのである。

親指シフトを覚えることで単純にキーの打鍵スピードが向上したという恩恵はあるのだけど、もっとも大きいものは、「劇的に生産性が向上する」という成功体験だった。


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