タイ旅行記 3-6 もうしばらくでゴングが鳴る

タイ旅行記の32回目です。

とりあえずチケット売り場を探して入口近辺をうろうろしていると、おばちゃんが一人近づいてきて「日本人?チケット欲しいの?」と片言の日本語で聞いてきた。

うっとおしいダフ屋が絡んできたなーと思い、完全に無視してチケット売り場を探す。

しかしおばちゃんは食い下がらずに「チケット欲しいの?私、IDパス持ってるよ!」といつまでもくっついてくる。なんだよしつこいなーと思って見てみたら、首から身分証みたいなものをぶら下げているようである。

どうやら「IDパス」がどうこうというのは、このスタジアムの正式なナビゲーターということのアピールのようだった。

おばちゃんは無視される対応には慣れっこのようで、「ようやく分かってくれた?」みたいな感じのことを言ってひとつため息をついた。

無視して申し訳ないことをしたが、ただでさえ海外旅行に来て警戒しているのに、会場入口で「チケット?」と聞いてくればこれはもうどう考えてもダフ屋だと勘違いする。

いっそ外国人専用の窓口を作って、そこに常駐した方が仕事はやりやすいと思うのだが。しかしそれはこの施設にしてみれば余計なことである。

ともかくおばちゃんは、まず最初にどの種類のチケットを買うか聞いてきた。事前にネットで調べた通りリングサイドを希望する。

ATMから引き出したばかりの2,000バーツ払ってチケットをもらうと、今日の試合のスケジュールを教えてくれた。なんと開催される試合数は驚愕の全10試合。終わるまでおよそ4時間半ぐらい掛かるとのことだった。

最初の試合は18時からスタートなので、終わるのは22時半ということになる。そんなに長時間、集中して見れるだろうか…。

若干、心配になりつつも、おばちゃんの案内で会場の中へと入った。

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撮影の仕事で3回ほど地元の格闘技ジムへ行ったことがある。最後に行ったのは3年ほどまえのことで、リングを見るのはそれ以来となる。

薄ぼんやりとした会場に、リングだけが明かりを照らされ浮き上がって見える。もうしばらくすれば、この上で戦いが始まるのだ。そう思うとゾクゾクとした気持ちになってきた。

格闘技が多くの人を惹きつけることに、明確な理由はない。この興奮とも不安とも言えない、何とも表現しがたいゾクゾクとした感覚がそのすべてのように思える。

観光でムエタイを見に来たからといって、寺院や市場へ行くのとはまったく心持ちが違うのだ。

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金沢在住のフリーランス・ライター。2014年より海外への一人旅をはじめる。これまでに訪れた国は16カ国。旅に使っているカメラは、2016年秋に亡くなった写真家の伯父・富岡省三氏のHasselblad 500C/M。