「騎士団長殺し」を1/4くらい読みました

村上春樹さんの「騎士団長殺し」をごくゆっくりとしたペースで読み進めています。第一部の半分まできました。この小説が第二部で完結するのなら、全体の1/4ほどを読んだことになります。

まだ途中なのでネタバレも何もありませんが、内容に少し触れると、主人公の住んでいる家のすぐ近くに井戸のような大きな穴があり、そこを開けて中へ入ってみたところまで話が進んだ感じです。「これから色々なことが起こるぞ」という思わせぶりな文章が続いています。謎があちこちに散りばめられていますので、この先が気になるところです。

ところで途中まで読んでいて思ったのは、「村上さんがいつの間にかミステリー作家になっている」ということでした。この一つ前の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は読んでいません。しばらく読まないうちに、作風がミステリー寄りへと変わっていったのでしょうか。

この人の小説の場合、最後まで読んでも謎が回収されないということが平気で起こるので、まあ読み進めてみないことにはわかりませんね。ともかくとてもおもしろいと思いながら読んでいます。

どういうところが面白いかと言えば、一人称の主人公の視点で描かれ、生活の細かい部分を描いている点があげられます。例えばスーパーに行って何を買ってどういう料理を作ったかだとか。膨大なレコードの中から一枚を選び、それについての感想を比喩を交えて考えるところだとか。昔から村上春樹の小説の好きな部分はそんなところでした。謎やストーリーよりも、一人の男性が現実的に生活を営んでいく、その描写になぜかしら心が惹かれるのです。

村上春樹の小説で僕が最初に手に取ったのは、「羊をめぐる冒険」でした。この小説も謎に満ちていて、それを解明していくのがストーリーの骨格になっています。物語自体もおもしろいのですが、僕が特に惹かれたのは終盤に山小屋で一人暮らす主人公の様子でした。

主人公である「僕」は、ロールプレイング・ゲームでいうところの手詰まりにおちいり、先へと行動できなくなります。そこで彼は、何もやることがないからと山小屋にこもり、延々と料理を作るのです。「パンの焼き方」という本を見つけ出して、パンまで焼いてしまいます。このあたりの描写がすごく好きでした。

「自分自身できちんと料理を作ってそれに満足する」といった様子が、自立した人間に思えたんですね。村上さんの主人公は往々にして困難な状況に巻き込まれますが、そうして料理を作ってたくましく生きている限り、この主人公は最終的に乗り越えてしまうだろう、そんな風に思えました。

今回の小説も、主人公がそうして食事を作り、一人で生活する様子が描かれています。どういう展開になるのかは今のところまったくわかりませんが、この描写がある限り、ものすごく不幸なことにはならないだろうと思えてきます。