マレーシア一人旅 1-3 街の印象

現地通貨とSIMカードを手に入れれば、街へ出ていくことが可能となる。時刻は夕方5時半くらい。まずはホテルへチェックインして、荷物をおろしてしまいたい。泊まるホテルは、クアラルンプールのBukit Bintang駅の近くである。

4G回線が開通したばかりのスマホでグーグルマップを起動してみる。現在地からホテルまでのルートを確認すると、まずは空港内にあるKLIAエキスプレスという特急列車に乗ってKL Sentral駅まで行き、モノレールへ乗り換える必要がある。特急列車は先ほどからウロウロしているショッピングモール内に何度も案内表示が出ていた。

その表示に従って歩いていくと、簡単に改札は見つかった。早速、窓口で切符を購入する。スマホのグーグルマップを見せながら、「KL Sentral駅まで行きたい」ということを指差しで伝達する。窓口の人はすぐに理解してくれて、電卓を叩いて料金を案内してくれた。

表示された金額は55MYR。日本円で1,430円である。マレーシアは物価が安いと聞いていたけど、なかなかどうして、まずまずの値段を取るではないか。さっき引き出したばかりの300MYRのうち、SIMカードと合わせあっという間に1/4ほどがなくなってしまった。

紙幣を渡して切符を受け取った。カードタイプの切符だった。電車の乗り方はだいたい世界共通のようで、いつも迷わずに乗ることができる。日本のSuicaのように改札口でセンサーにかざし駅の構内へ入った。ホームにはすでに始発電車が到着していた。乗り込んで壁に貼り付けてある路線図を確認してみる。停車駅はわずか5駅しかない。目的地のKL Sentral駅は終点の駅となる。

さすがに特急らしく、発車した電車はぐんぐんとスピードを上げて進んでいった。周りには僕と同じように旅行者と思われる人が数人乗っていた。誰もがすでに現地のSIMカードを手にしているらしく、それぞれがスマホを見ながら画面を操作していた。やはりスマホは、世界中の旅行者にとっても必需品なのである。

約30分を掛けて電車は終点のKL Sentral駅にたどり着いた。KL Sentralは東南アジア最大級という触れ込みの駅である。なんと設計は日本の建築家である黒川紀章さんが担当しているとのこと(ウィキペディア参照)。じっくり見て回りたいのは山々だが、まずはホテルに着きたいとモノレール乗り場を探すことにする。

とにかくすごい人の波で、モノレール乗り場がどこにあるのかわからなかった。駅の構内ではグーグルマップのGPSも効かなくなる。モノレールは緑色をモチーフにしているので、それを頼りに案内板を探すがよくわからない。

エスカーレーターの近くに机を置いて、何やら作業をしている人がいたので聞いてみることにした。「モノレール乗り場はどこですか?」とたどたどしい英語で聞いてみると、ものすごく面倒くさい顔をされてしまった。空港のSIM売り場といい、旅行者にフレンドリーはでない街である。まあ、たった二人の対応で印象を決めてしまってはいけないが。

ともかく面倒な顔をしながらも「この上を上がって右に曲がればあるよ」みたいなことを教えてくれた。お礼を行ってエスカレーターを上っていく。言われた通りに右手の道へ進んでいくと、無事、モノレール乗り場を見つけることができた。

券売機を見つけたのでBukit Bintang駅までの切符を買うことにする。液晶画面を操作して“Bukit Bintang”のボタンを押す。ところが料金がどこに出ているのかわからず、そこから先へ進むことができなかった。まごついていると、後ろにインド系のカップルが順番をついてきた。焦る。これ以上まごつくと、待っている人にご迷惑を掛けることになるな。

そう思って「お先にどうぞ」と譲ろうとすると、カップルの男性の方が「まずは言語を選択しなよ」と操作の仕方を教えてくれた。“English”を選び、次の画面で再び“Bukit Bintang”を押す。この次がわからずにまたもやまごつくと、画面中央に赤い文字で書いてある金額を指差しくれた。そして「ここにお金を入れれば買えるよ」と教えてくれる。「優しいなー、ありがたい」と思いながら紙幣を投入して、コイン型の切符を取り出し口から受け取った。

クアラルンプールの人は旅人にフレンドリーである。先ほどの意見から180度変わってしまったが、街に対する印象はそんなもんである。冷たくされればそういう印象になるし、優しくされればその街を好きになる。旅に出るようになってから、日本へ遊びに来た海外の人には全力で優しくしようと僕は心に誓っている。

コイン型の切符を改札のセンサーに近づけて、自動改札をオープンさせた。しばらく待つとモノレールが駅に到着。仕事帰りや学校帰りの学生でごった返す車内に、バックパックを担いで乗り込んだ。(続く)


金沢在住のフリーランス・ライター。2014年より海外への一人旅をはじめる。これまでに訪れた国は16カ国。旅に使っているカメラは、2016年秋に亡くなった写真家の伯父・富岡省三氏のHasselblad 500C/M。