マレーシア一人旅 2-4 イスラム美術館

配車係の男性はすぐに一人のドライバーを呼んで車を回させた。50歳位のマレーシア人のおっちゃんである。僕の方をちらっと見た後、配車係から行き先を聞いてさっさとタクシーへ乗り込んでいった。僕もその後に続いて、タクシーに乗り込む。すぐに車は発進して、マレーシアに来て初めて車に乗ることとなった。

運転手のおっちゃんはカーステレオをつけて、マレーシアの陽気なポップスを楽しみだした。お客と会話する気はなさそうである。その様子を見て取って、視線を窓の外へと向けた。キレイなビルが立ち並んでいるかと思えば、建設中の大規模なビル工事がところどころで起こっている。数年後にマレーシアを訪れれば、街の様子はまた様変わりしているだろう。気温の暑さとともに、まさに発展を続けているアジアの国のエネルギーを感じる。

15分程度で車は目的地のイスラム美術館へ到着した。代金は支払い済である。運転手のおっちゃんへお礼を言って、入口の前に降り立った。白を基調にしたキレイな建物だ。マレーシアはイスラム教を国教としている。国教に関する美術館だけあり、十分な資本を投下しているのがその立派な外観から感じられる。

中へ入ると広いロビーに受付があった。イスラム系の女性が二人と男性が一人立っている。受付を担当しているのは男性のみらしく、近づいていくと女性二人が男性の方を指差した。ここで入場料を払って、館内の簡単な説明を英語で受ける。入館料は12.70MYR(約330円)。男性は一通りの注意事項を話した後に、「どこから来ましたか?」と英語で聞いてきた。“From Japan”と答えると、「楽しんでください」と日本語で話してくれた。

日本語を聞いて嬉しくなりつつも、ひょっとしてあの人は色んな国の言葉を覚えているのだろうかと思った。韓国語でも中国語でもインドネシア語でも、一通りの言語で「楽しんでください」と言えるのかもしれない。異国の地で母国の言語を耳にすると嬉しいものである。サービス精神があるなーと感心してしまった。

エレベーターで階上へ上ると、まずはイスラム建築のミニチュア模型がズラッと並んでいた。一つ一つに説明書きもなされている。それらを読んでいると一日が終わってしまいそうに思えたので、ふらふらと歩きながら次のフロアへ行った。別のフロアにはイスラムに関する古文書が展示してあった。別のところには王族が使っていたらしい刀剣がいくつも飾ってある。壺があり、古代のイスラム教徒が着ていたのであろう衣服も飾ってあった。

いやはや、この建物だけでイスラム文化に関する造詣はかなり深まりそうである。あまりにも展示物が多いので、だんだんと早歩きになってきた。最後まで見終わった時には、効きすぎている冷房で鼻水が止まらなくなってしまった。鼻をすすりながらギフトショップへ立ち寄った。

姪っ子がキーホルダーを買ってきて欲しいと言っていたので、ここで物色することにした。他にも本に挟む栞など、荷物にならないものを選んで土産物として買った。この時点で時刻は午後2時半位。まだまだ日は高い。この後、どこへ行こうかと美術館内の椅子に腰掛けながら、しばし考えた。(続く)


金沢在住のフリーランス・ライター。2014年より海外への一人旅をはじめる。これまでに訪れた国は16カ国。旅に使っているカメラは、2016年秋に亡くなった写真家の伯父・富岡省三氏のHasselblad 500C/M。