マレーシア一人旅 2-5 なぜタクシーと出会えないのだ

ペトロナス・ツインタワーへは、事前予約すれば明日上ることができる。でもたぶん明日は行かないだろう。一度、敷地内まで入ったので、再び同じ場所へ行こうという気にはならない。ではマレーシアでは高い建物に上らないかと言えば、そんなことはない。マレーシアにはもう1つ、KLタワーという名所があるのだ。

KLタワーは、東京スカイツリーと同じく通信塔である。その高さは421メートル。通信塔として世界第四位を誇っている。ちなみに一位は日本の東京スカイツリーである。

ということでまだ時間も早いことだし、KLタワーへ行くことにした。グーグルマップでルートを調べてみると、電車では1時間弱ほど掛かる。タクシーなど車を使えば、15分ほどしか掛からない。圧倒的に車のほうが速い。

タクシーを使ってみようかと思ったが、やはり流しのタクシーを拾うのはちょっと抵抗があった。かといってUberは使えない。何かいい方法はないかと調べたところ、マレーシアの移動ではGrabというタクシー配車アプリの使い勝手がいいという情報を見つけた。メールアドレスと電話番号などを登録すれば、自分の場所までタクシーが迎えに来てくれるらしい。料金も表示されるので安心である。

早速、このアプリをダウンロードしてみる。起動すると、行き先を入力するところを見つけた。KL towerと入力すると、普通のタクシーを呼ぶか、高級車を呼ぶか、それとも相乗りするかといった選択肢が表示される。もちろん普通のタクシーで十分である。普通のタクシーを選んで、一番下の“BOOK”というボタンをタップ。すると一台のタクシーから「そっちへ向かうよ」というメッセが入った。おおー、これはかなり便利だ。イスラム美術館前のベンチに座って待っていることにした。

今か今かとタクシーの到着を待っていると、新しいメッセがタクシーから届いた。“I’m here.”と書かれている。しかし見回してもタクシーらしき車は見当たらない。“Where??”と送り返してみるが、“I’m here.”と繰り返すばかり。いや、どこにも見当たらないんですけど…。

呆然と立ちすくんでいると、スマートフォンの着信音が鳴った。マレーシアで買ったSIMカードを入れているので、日本の知り合いからの電話ではない。もちろん掛けてきたのは、Grabで呼び出したタクシーの運転手である。

話し言葉だけでコミュニケーションを取る電話は不安がありまくりだが、無視するわけにはいかない。出るしかない。運転手の話を受話器越しに聞いてみるが、ほとんど何を言っているのかわからなかった。なんとなく、「近くまで来ているんだけど、あんたどこにいるの?」みたいなことを言っている気がする。なのでたどたどしい英語で、「イスラム美術館の前にいるよ!」と連呼する。通じたのか通じないのかわからないが、“OK”という声とともに電話は切れた。

その後も“I’m here.”というメッセが届くもどこにいるかわからず、“Where??”と繰り返す不毛なやり取りを続けた後、“I’m lost”という悲しいメッセとともに物別れに終わってしまった。なぜだ。なぜタクシーと出会えなかったのだ。(続く)