ベトナムで訪れた、戦争証跡博物館のこと

ちょっと時間が経ちましたが、ベトナムへ行った際に訪れた戦争証跡博物館のことを書いてみます。

ここで質問があるのですが、皆さんがベトナムへ旅行したとして、戦争証跡博物館という場所へ行きたいと思うでしょうか。実際にアンケートを取ったわけではありませんが、日本人はあまり行きたくないのではないかと思います。それは僕自身もそうでした。

これはなぜかと言うと、一般的に戦争というのは第二次世界大戦のことを指します。第二次世界大戦で日本は、敗戦国として今もなお賠償責任などで謝罪をしているんですね。謝罪に関してここで論点としませんが、多くの日本人にとって「戦争」という言葉には責任や謝罪といった肩にズシッとのしかかる重荷があると推測します。

なので旅行でベトナムへ訪れたのなら、もっと開放的で楽しい気分になれるところへ行きたいと思うでしょう。実際、ホーチミンの町中では日本人を多く見ましたが、戦争証跡博物館では全くと言っていいほど見ませんでした。

どういった人が多かったかと言えば、大部分が白人でした。ヨーロッパ人かアメリカ人なのかはわかりません。ともかくこの施設には白人が多く訪れていた、そのことが印象に残りました。

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戦争証跡博物館とは、ベトナム戦争についての展示を行っているところです。広場には戦車や戦闘機が置かれています。建物の中には銃やバズーカ砲など武器も多く陳列されていました。その中で多くのスペースを取っていたのが、枯葉剤の後遺症に苦しむ人々の写真でした。

枯葉剤というのをご存知でしょうか。展示の表記では、“ Agent Orange”と書かれていました。僕は何度も出てくるこの英語の意味がわからず、その場でGoogleで調べて知ることができました。

枯葉剤は、ベトナム戦争時にアメリカ軍によって大量に散布されました。その目的は、森林を絶滅することにありました。ベトナム兵が隠れているジャングルを死滅しようとしたのですね。その枯葉剤にはダイオキシンが含まれていて、森林だけでなく人体へも多大な影響を及ぼしました。

この枯葉剤の問題点は、ダイオキシンを浴びた人の子ども、そして孫たちへも影響が出ていることです。戦争とは直接関係のない人へ、時を越えてダメージを与えているのです。

この戦争証跡博物館では、枯葉剤が原因と思われる奇形の子どもたちの写真が多く展示されていました。僕たちが人間を人間として認識するのは、あるべき場所にあるべき形でそれぞれの身体のパーツが存在しているからです。しかしその写真に写っている子どもたちは、身体の一部分が膨らんでいたり、逆に極端にしぼんでいたり、左右が不対象であったりと、見ているだけで不安やある種の恐怖を覚えるような身体をしています。

それが本人たちとは直接関係のない枯葉剤という毒材によってなされたことが、本当に胸が痛みました。訪れている白人たちは、皆、言葉を発さずに、無言で写真とそこに書かれている英文を読んでいました。

現在は戦争のない地域に住んでいるとしても、国の成り立ちには必ず争いがあります。地球上の誰もが、それぞれの戦争を胸に抱えているのです。どのような思いで写真や文章を読んでいるのか、おそらく自分とは違った心境だろうと彼らの姿を見ながら思いました。

写真の最後には、アメリカ合衆国前大統領のバラク・オバマ氏へ送った手紙の文面がつづられていました。枯葉剤の後遺症に苦しんでいる子どもたちがたくさんいる、と訴えていました。

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ベトナム旅行だからと、ベトナム戦争に関する施設へ行くつもりはまったくありませんでした。戦争証跡博物館へ行ったのは、ルート的に行きやすかったという単純な理由でした。しかし訪れてよかったです。

色んな国へ旅すると、自分の視点、自分が住む国の視点のほか、訪問先の国の視点、訪問先に住む人々の視点など、数多くの視点を得ることができます。

もちろん枯葉剤を撒いた罪悪感に苦しむアメリカの人もいるでしょう。こういったそれぞれの国や人々の視点を獲得することが、旅の大きな目的の一つ。そう思い知った戦争証跡博物館への観光でした。ホーチミンへ訪れた際には、足を運ばれることをお勧めします。