興味深いビジネスモデル、ステーキ有名店の「ひよこ」へ行ってきた

連日、雪が降っている金沢市です。昨日は雪の日をチャンスに変えようとばかりに、ステーキの有名店ひよこへ1人で行ってきました。

ひよことはどういう店か。事前に調べたところ、カウンター8席だけの小さなステーキ専門店です。メニューはステーキのみ。一人税込10,000円という、お高めの料金設定です。

でも相当おいしくて、全国からこのステーキを食べるためにグルメたちが集まってくるといいます。その噂を聞いて、1度は行ってみたいと思っていたんです。

しかし人気店らしく、連日予約で満席になるとのこと。なかなか行くタイミングをつかめずにいました。そこで今回の大雪です。さすがにこの大雪のときであれば、予約はそれほど入っていないだろうと推測しました。

昼すぎに電話してみると、どの時間帯でも入れるとのことでした。それならと18時に予約を完了。夕方になり、自分の家から15分かけて雪の中を歩いて行きました。

到着するとネットの情報通り、とても小さな店舗でした。女将さんが一人でやっている小さなおでん屋みたいな感じです。

立て看板には「ひよこ」ときちんと書いてあります。ともかく雪の中歩いてきたわけですから、中に入るしかありません。

ドアを開けると、すぐ目の前にカウンター席があります。そこを挟んでコックコートを着たシェフが鉄板の前に立っていました。

シェフはおそらく70代でしょう。その横に店員の女性が1人立っていました。

自分の名前を告げると、カウンターの1つの席に水を置いてくれました。着席するとすぐにシェフは、鉄板に野菜を投入。粛々と焼き始めました。

僕に何も聞くことなくです。この間交わした言葉は、自分の名前を告げただけ。入店から数分で調理がスタートしていました…。

すると女性の方から、小さなサラダが出されました。きゅうりとトマトだけのごくシンプルなサラダです。「冷たいうちにお召し上がりください」と言われ、早速食べてみました。まあ普通のトマトときゅうりのサラダでした。

そうしているうちにも、シェフは入念に野菜を焼き上げていきます。

鉄板の近くにバターが山盛りになっていて、焼きながら丹念にバターを足していきます。ある程度焼き上がったところで、シェフは後ろを向き、どこからか肉を取り出して鉄板へ乗せました。

かなり分厚い肉。見たところオイルでマリネしてあったように思います。

もちろん肉にもバターを付けます。塩胡椒もします。野菜と肉、一つ一つの素材を丁寧に焼き上げていきます。

10分弱で野菜はほどよく焼けたようで、1枚の皿の上に次々と置かれていきました。そしてまな板の上に肉のかたまりを乗せ、1センチ弱位の厚さでスライス。

肉を全て皿の上に乗せると、「はいどうぞ」と自分の目の前に置かれました。

最初に出た小さいサラダと、付け合わせの焼き野菜とステーキ。これですべてのメニューが出たわけです。これですべてです。これで10,000円です。

カウンターの上に西洋わさびが置いてあり、肉にそれをつけるよう言われます。早速、西洋わさびを付けて食べてみました。表面はこんがりと香ばしく、中は赤みが残っています。カツオのたたきのような感じです。

これがまあ、今まで食べたステーキの中で1番柔らかい。特別に高級な肉という感じはしませんでしたが、とろとろのお肉でした。

これは確かにうまい。記憶に残る味です。

おそらく醤油ベースのさらさらとしたソースに西洋わさびの爽やかさがとてもステーキに合います。300グラムはあろうかという、かなりの量のお肉でしたが、箸が止まりませんでした。どんどん食べることができました。

ものの10分ほどで完食。食べ終わったタイミングで、シェフが話しかけてきました。

「どこから来たの?」

おそらく、他県から来たと思われたようです。「近くに住んでるものです」と話すと少し意外そうな顔をしていました。

「ものすごくお肉が柔らかいですね」と言うと、「ぺろっと食べられるでしょう。いい肉はスルッとお腹に入るんだよ」と笑いながら言っていました。

そんな感じでお礼を言って、お会計をして店を出ました。

この店のステーキは確かに美味しかったです。それ以上に自分が興味を覚えたのは、この店のビジネスモデルです。

立派とは言えない外観に、カウンター席だけの内観。メニューは小さなサラダにお皿に盛られた焼き野菜とステーキのみ。これで10,000円です。

予約はひっきりなしに入り、全国的な有名店になっています。すごいですね。

ほぼステーキだけの値段として10,000円にするのは、よほど自信がなければできません。

10,000円の値付けをするとしたら、もっと色々なものを足してしまうのが人間の心理です。お客はコスパを意識します。10,000円で妥当もしくはお得と思わせるには、引くよりも足すことを考えるでしょう。

外観・内観を小綺麗にしたり広くしたりするのはもちろんのこと、スープをつけてみたり、ライスにこだわってみたり、デザートをつけてみたり。

増やすことで、お客さんが満足に思う境界線を探っていく。飲食店に限らず、商売はそういう見極めで値段や内容が決まっていきます。

でもひよこは、ステーキと小さなサラダのみ。それで10,000円の値付けで成り立たせ、人気店になっている。そのビジネスモデル自体がものすごく刺激的でした。

鉄板の後ろの壁には、3月から12,000円にいたします、と書いてありました。ここからさらに2,000円値上げするんです。

もしひよこへ行きたいと思っている人がいれば、値上げ前に行ってみてもいいかもしれませんね。おいしいステーキもさることながら、ビジネスモデルを体験するだけでも刺激になるかなと思います。


金沢在住のフリーランス・ライター。2014年より海外への一人旅をはじめる。これまでに訪れた国は16カ国。旅に使っているカメラは、2016年秋に亡くなった写真家の伯父・富岡省三氏のHasselblad 500C/M。