映画「万引き家族」の感想です

こんばんは。今日、「万引き家族」をみてきました。

邦画をみたのは、すごく久しぶりな気がします。「君の名は。」と「シン・ゴジラ」は劇場でみました。でもこれらはアニメと特撮で、いかにも邦画といったドラマ作品は本当に久しぶりです。

感想は、ひとことで言うと良かったです。どんなところが良かったか、書いてみたいと思います。盛大にネタバレありです。

この映画は、大きく3つパートで構成されています。

1つは、6人の疑似家族が平和に暮らす部分。次はおばあちゃんが死んで、お父さんとお母さんが警察に尋問を受ける部分。最後はお母さんに刑が確定し、それぞれが新しい生活に移っている部分です。

最初を構成1、次を構成2、最後を構成3とします。

ぼくは正直言って、構成2がはじまったときに構成1だけでよかったと思ったんです。

まず、「万引き家族」というタイトルと最初のシーンを見た段階で、「ああ、万引きしているところがバレて捕まるんだろうな」と予測がつきました。

ボロい一軒家に住んでいる6人は、誰一人、血がつながっていません。全員が見事に他人です。でも構成1では、「他人だからこそ、絆が深まる」という風に演出がなされています。

特に海のシーンは良かったです。5人が浜辺ではしゃいでいて、それを後ろからおばあちゃんが見守る。そこに争いや諍いはなく、家族間でありがちな不機嫌な人は存在していません。

「なるほどな、血がつながっていないからこそ、関係性がうまくいく。そんなことはあるかもしれない」ぼくはそんなふうに思いながら、このシーンをみていました。

その後、問題のシーンが訪れます。映画の冒頭のシーンでお父さんと一緒に入ったスーパーに、お兄ちゃんが妹を置いて入っていきます。ぼくは「ここで万引きが見つかってしまうんだろうな」と思いました。

すると予測に反して、お兄ちゃんは自分へ注意を引くために大げさにみかんを盗み、スーパーの外へ飛び出します。もちろん店員は驚いて追いかけていく。ついにお兄ちゃんはガード下へダイブして、足を骨折してしまうんです。

ぼくはこの辺りで映画が終わりになるのかと思っていました。この6人がどうして一緒に住むようになったのか。どういう関係性なのか。そういったことは謎のままですが、「血がつながっていないからこそ絆がある」というテーマを静かに伝えて、映画は幕を閉じるのかと。

すると映画は構成2に進んでいきます。構成2では、お父さんとお母さんが警察に捕まり尋問を受けます。警察はおばあちゃんがいなくなったことを不審に思い、二人に問い詰めるのですね。その過程で、この疑似家族がどうして一緒に住むようになったのか、少しずつ明らかになっていきます。

ぼくは正直言って、この謎解きの部分がいらないと思ったのです。この映画はミステリーではない。真相をひとつひとつ明かしていくと、説明過多になって白けてしまう。

でも最後の構成3をみたときに、「ああ、構成1で終わらなくてよかった」と思いました。もし構成1で終わっていたら、思わせぶりの底の浅い映画になっていました。

構成2は説明的ではありますが、警察に捕まって尋問を受け、それぞれが新しい生活に進んだからこそ浮き彫りになったことがあります。

最後のシーンでお兄ちゃんは、お父さんであるリリー・フランキーのアパートに一泊します。泊まってくれたことの嬉しさが、お父さんの態度からにじみ出ています。

お父さんは、本当の息子でなくても、親子のふりをしていたつかの間の時間が幸せだったのです。お兄ちゃんもお父さんのことを慕っていましたが、ひとつ気がかりなことがありました。自分が病院へ入院することになったとき、お父さんやお母さんは夜逃げしていたと聞いていたんですね。

そのことを「本当なの?」と聞いたとき、リリー・フランキーは「本当だよ」と答えます。

これはどう考えてもショックなことです。大変な目にあっている自分を、この人たちは捨てようとしたのですから。もし本当の家族であれば、骨折して入院した息子を見捨てるでしょうか。

このときにぼくは、「血がつながっていないからこそ絆がある」というのが大きな伏線だったことに気づきました。構成1は、「疑似家族は家族ごっこに過ぎない」という現実を知らせるための、かりそめの幸せを描いていたのです。

かりそめの幸せを美しく描いているからこそ、この映画は切ない。なぜならかりそめはあくまでもかりそめに過ぎず、それはいつか崩れてしまうものだからです。

バスに乗ったお兄ちゃんをリリー・フランキーは走って追いかけます。「もうお兄ちゃんは自分の家に来てくれないだろう。二度と会えないかもしれない」と悟ったからですね。

お兄ちゃんはそれをわかっていて、後ろを振り返りません。しばらく経って振り返ったあと、映像には後方の景色は映し出されません。おそらくそこにリリー・フランキーの姿はなかったのでしょう。

なんというか、後を引く映画でした。邦画らしい映画と言えます。

人の心の移り変わりを、丹念に描いています。また脚本を支える役者が、どの方も素晴らしかったです。もう公開する劇場がわずかになっていますが、おすすめしたいですね。

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