映画「判決、ふたつの希望」の感想

今日は金沢の単館系映画館・シネモンドで、「判決、ふたつの希望」という映画をみてきました。

これはすごく良い映画でした。シネモンドでは今週金曜(2018/10/19)まで上映しています。日があまりないですが、気になった方はぜひ足をお運びください。

ぼくは例によって、まったく前情報を持たずに劇場へ行きました。「ちょっと映画でもみようかな」と思ったタイミングに、たまたま上映されていたのが本作品だったのです。

上映してから5分ほどで、舞台は中東のどこかの国であることがわかりました。街並みの様子から「トルコかな?」と思い、話が進むに連れ「イスラエル?」となり、中盤くらいで「レバノン」ということがようやくわかりました(遅い)。

この映画は、非常に些細なことがきっかけで大の大人ふたりがいがみ合いをし、それが法廷へともつれ、さらに国中を巻き込む大論争へ発展するというストーリーです。

その根底にあるのは、レバノンという国の歴史にあります。ぼくは映画の中盤までどこの国が舞台なのかわからなかったくらいのぼんくらですが、それでも映画の内容は十分にわかりました。レバノンについての前情報を得てからみると、さらに楽しめるはず。

レバノンにはパレスチナ難民が多数います。それらは隣国のシリアやイスラエルから移動してきた人たちなのですが、難民を抱えることによってレバノンの国力は目に見えて衰えてしまったという歴史があります。

イスラエルから侵攻を受け、シリアや多国籍軍から介入される事態に。内戦状態になって、収拾のつかなくなってしまった期間があるのです。

それが、1970年台なかばから、1990年台初頭にかけて。つい最近のことですね。

今回、法廷で争うことになった二人の男は、一人が極右のレバノン人トニー。もうひとりがパレスチナ難民ヤーセルです。トニーにとって見れば、パレスチナ難民は自分たちの国をめちゃくちゃにした元凶に思えるでしょう。

パレスチナ難民のヤーセルにとってみれば、謝罪を要求されても「自分は悪くない」と屈服したくない心持ちがどこかにあるかもしれません。境遇を考えてみれば致し方ない。

双方が自分は正しいという言い分を持っていて、譲ろうとしない。裁判も「レバノン対パレスチナ難民」という構図になってきて、周囲を巻き込んで異様に白熱していきます。

どの映像も緊迫感があり、ドキュメンタリーをみているような気持ちがしました。罵り合いが多く、息苦しくなるカットの連続のなか、終盤に印象的なシーンが挿入されます。

二人でレバノンの大統領と話し合ったあと、それぞれの車で帰ろうとするシーン。同時にエンジンを掛けますが、ヤーセルの車はエンストをして動くことができません。

そのことに気づいたトニーは自分の車をUターンし、ヤーセルの車を無言で直してあげるのですね。トニーは車の整備工をしているため、修理などお手の物なのです。

法廷で罵り合い、歩み寄ることなどできないように思えて、困っている姿を見ればそっと手を差し伸べる。なにも相手のことを憎んでいるわけではないんです。歴史上の民族的な対立で、いわばポジショントークをしているだけ。

ああ、国や民族というのは、本当に厄介なものだ。このシーンを見ると、そう思いました。日本のような同一民族のハイコンテクストな土壌に生まれ育っている自分でも、そう思いました。

法廷の決着は思わぬ方向に進んでいくのですが、それはみてのお楽しみ。激しい法廷闘争の映画でありながら、心に優しさや悲しみが染み入ってくる良作でした。ぜひ。

最後に、今年劇場でみた映画の個人的なランキングです。

1 レディ・プレイヤー1
2 アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
3 判決、ふたつの希望
4 ミッション:インポッシブル/フォールアウト
5 万引き家族
6 カメラを止めるな!
7 リメンバー・ミー
8 スター・ウォーズ 最後のジェダイ
9 ジュラシック・ワールド/炎の王国
10 シェイプ・オブ・ウォーター
11 きみの鳥はうたえる
12 キングスマン: ゴールデン・サークル
13 ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
14 女は二度決断する
15 ヴァレリアン 千の惑星の救世主