思考は忘れることで整理される。「思考の整理学」レビュー

思考の整理学」という本を読んだのでご紹介します。 書いたのは外山滋比古さんです。

この本の発行年は1983年です。今から36年前の本ですね。

おそらくこの本が今の時代に出版されるなら、「頭のゴミを捨ててスッキリさせる! 超思考整理学」みたいなタイトルになるのでしょうね。

タイトル同様、本文もキャッチーな項目などないです。著者自身の例を出しながら、思考の整理法について淡々と書いています。

その書き方が返って印象に残りました。エピソード記憶として自分の頭に植え付けられたみたいです。

あなたの能力は、グライダーか飛行機か

まずこの本の序盤で、人間には「グライダー能力」と「飛行機能力」の2つのタイプがいると定義づけます。「グライダー能力」とは、凧のように風に煽られ飛ぶ人のこと。つまり受動的に知識を得ている人です。

一方、「飛行機能力」とは、エンジンを持ち方向を定めて自力で飛ぶ人のこと。自分で物事を発明・発見できる人です。

もちろん「飛行機能力」のほうが良いわけですが、「いまの学校教育はグライダー能力を身に付けさせてばかりいる」と苦言を呈します。

教えられるまま、与えられる知識をただ得ている生徒ばかり。学校もまた、生徒が受動的になるよう仕向けているというわけです。

そこでこの本では、「飛行機能力」を持つにはどのような思考をしていけばいいのか、ということを解説していきます。

技を盗もうとすることで、飛行機人間へ変わっていく

そもそも昔の塾や道場では、入門してくる生徒に対してすぐに教えようとはしませんでした。薪割りや水汲みなど、師匠の言いつけで雑用ばかりやらされていたんですね。

弟子はそんなことばかりしていては成長できませんから、なんとか師匠の技を盗もうとします。ただ机に座って授業を聞くような学習法ではない、昔は主体的に学ぼうという姿勢をシステム自体が作り出していたんです。

こういった主体的な姿勢から、新しい知識や情報を習得する力が生まれます。つまりグライダー人間として入ってきた弟子たちも、師匠の技を盗むうちに飛行機人間へ変貌していくのです。

一晩寝て忘れれば、思考は自然と整理される

またこの本でボリュームを割いている事柄に、「忘れる」ということがあります。

脳のメモリは限られています。頭をよく働かせるためには、価値のないことをどんどん忘れていったほうがよい。忘れてもいいことは、メモに書いて頭から追い出していくことが大切。

「忘れる」ことに関係して、物事を考えるときには素材やアイデアをいじらずに寝かせることを推奨しています。寝かせるというのは、なかったことのように忘れてしまうことと同義です。

19世紀のイギリスの小説家ウォルター・スコットは、やっかいな問題が起きたときには、「明日の朝7時には解決しているよ」と言って寝てしまうことが多かったそうです。そして不思議なことに一晩寝れば、前日には大きな問題だと思っていたことが落ち着くべきところへ落ち着いているのです。

一晩寝て忘れることによって、絡み合った思考が自然と整理されるんですね。

行動を変えていくのも、忘れるのに良い方法

忘れる方法としては、まず睡眠が上げられます。その他にも、ひとつの行動をしたら別の行動に移ることでも、うまく忘れることができます。

脳は一つのことにずっと集中すると、疲労が蓄積して能率が悪くなってしまいます。

例えば学校ではまったくつながりのない教科を、休み時間を挟んで連続で授業します。脈絡のない教科を連続で行うと非効率に思えますが、脳を飽きさせずにうまく忘れながら続けるには最適な方法なのです。

「時の試練」をくぐり抜けるためにも、忘れることは大切

もうひとつ忘れることにつながることとして、文章においての「時の試練」があります。

夜に文章を書いて気持ちがどんどん盛り上がっても、翌朝に見てみると「よくこんなことを書いたな」と恥ずかしい思いがする。これもまた、時を経て文章が風化してしまったから感じることです。

良い文章というのは、こういった時の風化に耐えられます。時の試練に耐え、数十年単位で生き残ったものが古典として語り継がれるのです。

かといって、自分の書いた文章を数十年も寝かせるのはなかなか大変です。この期間を短縮する方法としても、忘れることが有効です。

書いた文章を寝かせて忘れたあとに、読み返してみる。それを繰り返してノートへ残していけば、時の試練を乗り越えた良い文章ができあがっていくでしょう。

思考は書いたり話したりすることで、研磨されていく

考えをまとめるのに最適な方法は、ともかく書いてみることです。頭の中で考え続けても思考は整理されず、先へも進めません。

書いてみれば頭がすっきりして先も見えてきますし、新しい着想も生まれます。そして大切なのは、書き出したら止まらずに勢いのまま書き続けること。

自転車もスピードを出せば少しくらいの障害をものともせずに走り続けられます。ノロノロ運転をしていたら、小石にでもつまずいてしまいますよね。勢いよく書き上げたあと、ゆっくり推敲をしていけばいいのです。

「平家物語」という古典があります。とても入り組んだ物語でありながら読むと頭に入ってきます。その理由は、たくさんの琵琶法師によって語り継がれてきたから。多くの琵琶法師が物語を伝えたため、その過程で文章が研磨されていったのです。

思考というのは多くのチャンネルをくぐらせるほうが良いです。たくさんの琵琶法師が語り継いだように、頭で考えるだけではなく、文章へ書く。書いたものを人へ話したり、読ませたりする。

そうしていけば、考えがどんどんまとまり思考が整理されていくのです。

「思考の整理の仕方」で参考になることがたくさんありました

思考の仕方ではなく、本のタイトル通り「思考の整理の仕方」がとてもわかりやすく書いてありました。紹介しきれませんが、参考になる事柄がたくさんありましたね。

考えがとっちらかってしまったり、なかなか深められない人はヒントになるかもしれません。おすすめです。


金沢在住のフリーランス・ライター。2014年より海外への一人旅をはじめる。これまでに訪れた国は16カ国。旅に使っているカメラは、2016年秋に亡くなった写真家の伯父・富岡省三氏のHasselblad 500C/M。