メタ認知をわかりやすく解説。「メタ思考トレーニング」のレビュー

「メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問」という本を読んだのでご紹介します。著者はビジネスコンサルタントの細谷功さんです。

まず皆さんに質問です。「メタ思考」もしくは「メタ認知」という言葉を、うまく説明できまか。

ぼくは「なんとなくわかっている」といった感じで、おそらくうまく説明できなかったと思います。でもこの本を読んで、「メタ」という概念を理解できました。

我々は、常に思考の壁に囲まれている

メタ認知とは、物事を一つ上の視点から見ることです。

私たちは通常、自分たちの視界の中だけで生きています。「自分の思考」という壁に囲まれている状態なんですね。

「囲まれている」ことにすら、普通に生活しているときに気づいていません。ここから抜け出すためには、「自分は思考の壁に囲まれている」と認識することが必要です。

自分の思考の壁をよじ登って、物事を一つ上の視点から見ようとする。それまでより広い景色を見るイメージです。これがメタ認知です。

メタ認知のできないひとの特徴

「自分の思考の壁から抜け出そう」そう思った時点で、メタ認知はできています。こういった思考すら思い至らないひとはたくさんいます。この本では、メタ認知できないひとの特徴を以下のように書いています。

メタ認知のできない人

・感情にまかせて行動する人

・思い込みが激しい(ことに気づいていない)人

・常に具体的でわかりやすいものを求める人

・(根拠のない)自信満々の人

・他人の話を聞かずに一方的に話す人

・「自分(の置かれた環境)は特別だ」という意識が強い人

どうでしょうか。身近に思い浮かぶひとがいるのでは。

こういったひとは自分が持つ「思考の癖」に気づいていません。そのため、「近ごろの若いものは不甲斐ない」という言葉を使ったりします。この言葉は「非メタ認知の権化」です。その理由は以下の通り。

「近ごろの若いものは不甲斐ない」という言葉の問題点

・自分の若いときのことは棚にあげている

・自分たちの時代だけを特殊視している

・そういう若い世代を作ったのは自分たちの世代だと気づいていない

「メタ認知ができないとあまりよくないみたい」というのはわかってきました。ではメリットはなんでしょうか。

メタ認知ができるとどのような利点があるか

メタ認知の利点としては、以下の3点があげられます。

メタ認知の利点

1 成長するための気づきを得られる

2 思い込みや思考の癖から脱することができ、視野を広げられる

3 1と2を使い、創造的な発想ができる

つまりメタ認知ができることで、ビジネスの面で有利になるのですね。

メタ認知を鍛えるためのトレーニングとして、著者は2つの思考を上げています。Why思考とアナロジー思考です。

メタ思考を鍛えるWhy思考

Why思考とは、文字通り物事に対して「なぜ?」と疑問を持つことです。問題を与えられてもすぐに答えを解こうとせず、問題を上から見て(メタ認知)、問題そのものについて考えるようにします。

例えば上司から、何かの調査を依頼されたとしましょう。答えを求めるなら、すぐに調査を開始して結果を報告すべきです。

でもここで一段思考を上げて、「なぜ上司は調査を必要としているのか」と考えるのです。すると調査をする目的が見えてきて、「その目的をかなえるためには別の方法があるかも」と気づくことができます。

もうひとつ例を出しましょう。

問題そのものについて考え、上位目的を特定する

アメリカの自動車メーカーを作り上げたフォードは、次のような有名な言葉を残しました。

「もし顧客に何が欲しいのか尋ねたら、『もっと速い馬が欲しい』と答えただろう」

顧客の問いにただ答えを求めようとすると、速い馬を探すことになります。でもここでWhy思考を使って、「なぜ顧客は速い馬が欲しいのか」と考えてみる。

すると、「速く安く安全に移動したい」という上位目的が見えてきます。つまり顧客にとって欲しいものとは、馬でなくてもよいのです。こういう思考で、車という移動手段は発明されたのですね。

アナロジー思考でビジネスを有利に

Why思考と並べ、もう一つのトレーニングに上げているのがアナロジー思考です。

アナロジーとは類推という意味です。複数のものの共通点を見つけて、新しい発想を生み出すという思考法です。

アナロジー思考がビジネスで必要な理由として、以下の3つが挙げられます。

アナロジー思考を持つ利点

1 現状にとらわれない新しい発想ができる

2 抽象化によって、新しい概念を理解できる

3 複雑な事象を他者へ簡単に説明できる

仕事をしていると知らないうちに「業界」という枠に囚われてきます。この枠に入ってしまうと、なかなか新しいものを生み出せません。

異なる世界(異業界)で共通しているものを探して、具体的なパクリではなく、抽象度の高い本質的な真似をする。そうすることで、斬新なアイデアは生まれます。

発信が増えている今こそ、メタ思考が必要

この本には、メタ思考をトレーニングするための例題が豊富に出されています。それを考えるうちに、メタ思考を行なうコツがつかめてきます。

今はSNSやブログなど、個人の発信の場がたくさんあります。独りよがりのコンテンツはなかなか支持されないものです。メタ思考を取り入れることで一つ上の景色から眺めると、新たなアイデアや発信の姿勢などがつかめそうです。

発信の機会が増えている今だからこそ、メタという考え方は必要になってきています。その取っ掛かりとして、とても良い本でした。


金沢在住のフリーランス・ライター。2014年より海外への一人旅をはじめる。これまでに訪れた国は16カ国。旅に使っているカメラは、2016年秋に亡くなった写真家の伯父・富岡省三氏のHasselblad 500C/M。