日本の会社の構造的な問題とは。「働き方 2.0 VS 4.0」

「働き方 2.0 VS 4.0」という本を読んだのでご紹介します。著者は橘玲さんです。

この本は日本のサラリーマンのダメな点を指摘しています。そのため会社員の方が読まれると心が痛むかもしれません。でも指摘しているのは会社のあり方そのものと、日本のシステム上の問題点です。

個人は能力が高くても、構造上それを活かせないという文脈なんですね。

構造を捉えるのは大切なことです。会社員の方は決して読んで損はないと思います。

長時間労働が蔓延している日本

まず日本の会社の問題点です。

言わずもがなですが、日本は長時間労働が問題になっています。それは数字でもはっきりとあらわれています。以下が週49時間以上働いている労働者の国別割合です。

日本…20.8%
アメリカ…16.4%
イギリス… 12.2%
フランス… 10.1%
ドイツ… 9.6%

ご覧のように日本が目立って高いです。ドイツやフランスに比べると二倍以上。

具合の悪いことに長時間労働のわりに労働生産性は低いのです。日本の労働者一人あたりの生み出す利益は8万4027ドル。これはアメリカの66%しかありません。

つまり日本のサラリーマンは過労死するほど長時間働いているのに、利益をまったくあげていないんですね。それはなぜなんでしょうか。

「正社員と非正規」は明確な身分階級

そもそも日本の「正社員と非正規」の枠組みは、海外では見られません。概念自体がないから、正社員の英訳が存在しないんです。これは他の先進国には例のない日本特有の明確な「身分階級」です。

同じ仕事内容でも非正規というだけで給与は低く、また経営判断により簡単に解雇されます。そのため特に若い人は、「何が何でも正社員にならなければ」と強迫観念に駆り立てられています。

この身分階級のある土壌がブラック企業を生み出しました。

彼らのビジネスモデルは、「正社員にする」と誘い言葉で人を集め、アルバイトの最低賃金以下で使い倒すものです。

低賃金と長時間労働で疲弊し辞めていっても、正社員を望む人は後からいくらでも入ってくる。自転車操業的に人員を確保し、人件費を抑えていたのです。

ところが最近ではブラック企業の問題点が指摘され、業績が傾いています。日本全体が人手不足におちいったことで、こういった企業の不健全な雇用体制が顕在化してきたのです。

労働時間の少ない女性は、会社に忠誠心を示せない

「正社員と非正規」という身分差別だけでなく、日本の会社にはあらゆる差別がまかり通っています。その代表的なものが男女差別です。

例えば日本の女性管理職の割合は11%です。これはアメリカ43%、フランス39%、イギリス34%などに比べると圧倒的に差があります。

また大卒の女性より高卒の男性の方が出世する傾向が高いデータがあります。これはなぜでしょうか。

日本の昇進の査定は、「就業時間(残業時間)」で決められるからです。労働時間で会社への忠誠心を測るのですね。

女性は出産すると、子育てのため残業する必要のない仕事を割り当てられます。必然的に就業時間が目減りして忠誠心を示すことができず、給与が減り昇進もできなくなるというわけです。

サービス残業は奴隷労働

日本の会社の悪しき風習に「サービス残業」があります。世界からすると、「無給で残業をするなど信じられない」といったところです。

日本は正社員の雇用を奪う解雇はしません。そのかわり、業務に対して逆らってはいけない暗黙の了解があります。裁判所で不当な異動や転勤を訴えてもほとんどが却下されてしまうのです。

会社というイエに滅私奉公するのが日本独自の風習。そのためサービス残業もいとわずとなりますが、その姿は海外の人からすると奴隷労働に見えてしまいます。

ゼネラリストを育てる日本の悲劇

そもそも海外では、仕事とは専門性を指します。「仕事は何をしていますか?」と尋ねて会社名を答える人はいません。

法務担当なら弁護士資格を、経営幹部やマネージャーならMBAなど有しています。

日本では「ゼネラリストを養成する」という名の下、さまざまな部署を経験します。その結果、専門が不明の「サラリーマン」という奇妙な身分が誕生します。

こうしたゼネラリストの問題は、必要な知識やスキルを獲得しないまま年功序列で役職を与えられ、本人の能力を越えた責任を負わされることにあります。

海外では専門性の高いプロジェクトを行なう場合、外部からスペシャリストを招聘してリーダーに置きます。その方がチームが機能し成果を上げやすくなるからですが、日本では社内の乏しい人材プールから適任者を探すことがほとんどです。

社内の適当な人物を配置したところでうまくいくはずがなく、混乱する現場を何とか乗り切ろうとマンパワーの長時間労働が横行します。その結果、パワハラとセクハラが蔓延することになります。

長時間労働で過労死など犠牲者が出ても、今後もなくなることはないでしょう。なぜなら説明したようにこれは日本の会社の構造的な問題だからです。

日本のサラリーマンは国際的に会社に対してのエンゲージメントが異様に低いです。それもこの構造的な問題があるからで、いわばサラリーマンは長時間労働により忠誠を強いる会社という組織を憎んでいるのです。

会社でなく個人の資源で評価を高める

こういった構造的な問題があるなかで、日本のサラリーマンはどのように生きていけばいいのでしょうか。

会社員も定年を迎えれば誰もがフリーになります。人生100年時代としたら、残り40年間もフリーエージェントを経験することになります。

そのため会社のブランドに依存せず、自分自身の評判を高めていくことが未来世界で生き延びる方法です。

評判を高めるには、何よりもギブすることが必要。「知識」や「人脈」をギブしまくれば、ネットワークのハブになれます。ハブには情報や富が集まります。それは「負けないギャンブル」をやるようなものです。

かといって会社の資源だけをギブしていると、異動や退職のあとにギブするものがなくなってしまいます。あくまでも個人の資源をギブすることが肝心です。

ゼロサムゲームではなくプラスサムゲームを起こすことで、参加者全員が豊かになる社会を目指していくのです。

この本で、日本の会社の構造的な問題を知る

この本は海外の話もたくさん出ているのですが、特に印象に残った日本に関する部分だけ抽出しました。

書いてあることは誰もが薄々気づいていることではないでしょうか。もし自分が20代のときにこの本に出会っていたら、人生はまた違ったものになったかもと思いました。

日本の会社の構造的な問題点を知るのに良い本でした。おすすめします。