撮るまでに時間が掛かるから、ハッセルブラッドは自分に必要なカメラ

写真を撮っていておもしろいなと思うのは、撮った瞬間の空気の匂いもセットで覚えていることです。

写真を撮っているひとの多くはそうなのかもしれません。特にぼくの場合は、カメラが深く関係しています。ぼくはハッセルブラッド500C/Mという古いフィルムカメラを使っています。

このカメラは撮ろうと思ってからシャッターボタンを押すまでに、ある程度の時間が掛かります。トップのファインダーを開いて構図を確認し、iPhoneの露出計で露出を調べます。

絞りとシャッタースピードを合わせ、ルーペを出してマニュアルでピントを調節。マガジンスライドを抜いて、ようやくシャッターを押せます。ここまでどんなに少なくても30秒は掛かります。

色々やることがあると、最初は思ったように撮ることができませんでした。ぼくは街なかの人を撮ることが多いのですが、ゴソゴソやっているうちに撮りたかった人が移動してしまうんです…。

それでも試行錯誤を繰り返すうち、コツみたいのはわかってきました。撮りたいひとを撮るより、「撮りたいな」と思った場所で誰か通るのを待てばいいんです。

準備を整えて待っているうち、たまたま撮りたいと思える人やシーンに遭遇したら、ようやくシャッターを押す。するとそれまでに感じた大気の匂いを一緒に覚えてしまうわけです。

なので自分の撮った写真を眺めていると、そのときの空気を一緒に思い出します。

晴れているときの太陽の匂いや、寒かったときのツンと肌を刺す大気のこと。そして「ぼくはこのときの空気をきちんと写し出せているかな」と考えます。

ぼくはハッセルブラッドというカメラが好きなのですが、撮るまでに時間の掛かる部分が好きなのです。撮るまでに空気の匂いを覚え、できあがった写真を見て空気を写せているかと考える。それらはデジタルカメラでは思わなかったことでした。

カメラは世の中にものすごい種類があって、自分にフィットするカメラに出会えるかは運の世界。

ハッセルブラッドを手にしたのは、去年の7月でした。写真家だった伯父さんの防湿庫に眠っていたものを見つけたのです。うまく撮れるまで試行錯誤の連続。修理するのに費用も掛かりましたが、手放せないカメラになりました。

ハッセルブラッドに出会えたぼくは幸運でした。


中判フィルムの美しさに心打たれ、伯父さんの遺品ハッセルブラッドで写真を撮るように。年に数回、海外へ一人で行き、フィルム写真と旅行記を発信しています。