NYの廃材を用いたギターが、アーティストを引き寄せる。映画『カーマイン・ストリート・ギター』レビュー

カーマイン・ストリート・ギター

ドキュメンタリー映画『カーマイン・ストリート・ギター』を見たので、ご紹介します。

舞台は、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ。
ここに小さなギターショップを営む、1人のギター職人がいます。
その名も、リック・ケリー。
彼が、この映画の主人公です。

リックはギターを自ら製造し、販売しています。
ボディは、木製です。
その材料の仕入れから、加工まで行っています。

弟子のシンディと、母親のドロシー、そしてリックの三人で、お店の業務を切り盛りしています。

店舗と工房があるだけのこの小さな店に、アメリカの名だたるギタリストたちが訪れます。
皆、リックの作るギターを買い求めやってくるのです。

その理由は、何か。

ニューヨークの廃材を用いるのは、それだけで意味がある

リックのギター作りには、木材の仕入れに特徴があります。

取り壊される建物の廃材を譲り受け、ギターのボディとして使用しているのです。

廃材はどれも、ニューヨークで200年以上前に使われたものばかり。
立派な建築物だけでなく、街角のバーなど庶民的な建物も多いです。

バーの木材を使ったギターを手にしながら、「何杯ものグラスの染み込んだ香りがする」とリックは目を細めます。

つまりリックの作るギターの魅力は、ニューヨークの歴史をイメージできる点です。

古い木材ですから、時間を掛けて乾燥した音の素晴らしい響きがあります。
ただそういった音質そのものより、「ニューヨークの200年以上前の建材」という事実がより重要かと思いました。

ニューヨークを活動の拠点としているギタリストは、その街を愛しているし、その街でなければならない理由がある。

彼らにとって最も大切な道具のギターに、ニューヨークの廃材を用いるのは、それだけで意味のあることなのです。

ひとは、物語に関心を持つ

もしリックが単なる「腕のいいギター職人」であったなら、ドキュメンタリー映画を作成する話がきたでしょうか。

「腕のいいギター職人」に有名なギタリストは集まったかもしれませんが、映画化にまで至ったかはわかりません。

ニューヨークの廃材を用いている事実に監督のロン・マンは興味を持ち、映画を作った。
そして観客もまたその内容に興味を引かれ、映画館へ足を運んでいる。

この映画を見ながら、「ひとは、ストーリー(物語)に関心を持つ」と改めて思いました。

爽やかな余韻の残る良い作品でした

カーマインストリートギター』予告編より

といってもリックは、「ニューヨークの古い建材を使えば、話題になるだろう」と打算的な考えはまったくなかったはず。

最初のきっかけは、ジム・ジャームッシュが自宅の屋根裏の木材を手にして、「これでギターを作って欲しい」と頼んできたことでした。

「おもしろいアイデアだ」と思ったリックは、それから20年もの間、廃材を集めギターを作り続ける日々を過ごすようになります。

ロングアイランドに生まれた彼もまた、ニューヨークが好きなひとり。
だからこそ、古きニューヨークの廃材を使ったギター作りにのめり込んでいったのです。

環境や文化の保護といった説教臭さはなく、ニューヨークと音楽の好きな人たちが集まり、ギターについて語り、弾いて楽しむ。

観終わったあとに爽やかさと、自分の残してきた仕事をふと振り返ってしまう。
そんな素敵な映画でした。

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