最終更新日 2021-10-24
今年読んだ本の中で影響の高かった1冊が、中島聡さんの『結局、人生はアウトプットで決まる』です。
この本の良い部分はたくさんあるのですが、最も心を動かされたのがこの記事のタイトルにも書いた一文です。
そもそも、文章とは感想や感情ではなく、「情報を伝える道具」
『結局、人生はアウトプットで決まる』より
これを読んだときに、頭の霧が晴れる思いがしました。
この記事では、『結局、人生はアウトプットで決まる』をレビューします。
この記事の目次
中島聡著『結局、人生はアウトプットで決まる』レビュー
中島さん自身が「文章とは感想や感情ではなく、『情報を伝える道具』」と気づいたのは、一冊の本がきっかけでした。
その本とは『理科系の作文技術』です。
『理科系の作文技術』では、文章を書く際は必要な要素だけをもれなく記述し、心情的要素を含まないことを説いています。
『理科系の作文技術』を読んで中島さんは、「文章にとって大切なのは『情報の伝わりやすさ』」と気づき、それまで苦手だった執筆が簡単なものに思えたと言います。
小学生の作文の体験が、文章を書けなくしている
そもそも日本人にとっては、小学校時代の作文を書く授業が弊害となっています。
本の感想や感じたことといった曖昧な記述を求められ、幼少期という人生のスタート時点で文章を書くハードルを無駄に上げられているんです。
自分の心の動きを言語化するには、メタ認知とそれを表す語彙力が必要です。
大人でも難しいと思いますが、それを語彙の乏しい小学生が行うのは無理難題です。
しかも作文には、明確な評価基準がありません。
採点は、先生の個人的な感覚で決まります。
そのため先生に受けそうな、きれいごとの感想を書いた作文ばかり作られることになるのです。
文章の本質は、情報の正確な伝達
でも文章の本質とは、美辞麗句を並べ、上っ面な表現をすることではありません。
執筆の目的とは、「自分が見たり聞いたり考えたりしたことを、正確に他者へ伝える」です。
そのために、むしろ美しい表現は邪魔。
誰かを納得させるための、嘘の感想などもってのほか。
大切なのは情報をわかりやすく明確に伝える、実践的な技術です。
中島さんは本の中で、「例えば、このような課題を子どもたちへ出すべきだ」と主張します。
深く納得しました。
作文の授業で子どもたちに出すべき課題は、本を読んだ感想ではなく、「ランドセルとは何か、見たことがない人に説明する文章を400字以内で書け」といった、情報を伝える描写力を求める内容であるべきなのです。
『結局、人生はアウトプットで決まる』より
読者は、合理的な文章を求めている
もちろん詩や小説と言った文学作品は別ですが、文章を読む際、ほとんどの読者は「名文より明文」を求めます。
美しい表現を駆使しても、「結局、何が言いたいんだろう?」となっては、伝達の目的が達成されません。
つまり求められているのは、合理的な文章なのです。
合理的な文章とは、論理の流れがはっきりとしていて、明快で簡潔な文章のこと。よけいなことは書かず、必要なことだけをもれなく、順序立てて記述した文章のことです。「何を伝えたいのかがはっきりしている文章」とも言えます。
『結局、人生はアウトプットで決まる』より
価値ある情報を、合理的な文章で書く
こう読むと、不安がよぎるかもしれません。
「合理的な文章が大切なのは、わかった。でもそんなおもしろみのない文章など、誰も読んでくれないのでないか」と。
ぼくも以前、そう考える部分がありました。
確かに人が文章に求めるのは、「おもしろさ」に違いありません。でもそのおもしろさには、「fun(楽しい)」と「interesting(興味深い)」の2種類があります。
合理的な文章に、「fun」な要素はないかもしれません。
しかし情報に価値があり、論理的でわかりやすく解説してあれば、読む人は「interesting」なおもしろさを感じてくれるのです。
自分の意識を変えてくれた一冊
自分も、日記のようなブログを続けていた時期がありました。
もちろんそういったブログもあってよいですが、「他者へわかりやすく伝える」を意識すると、文章そのものが変わっていき、読む人にとっての価値も上がります。
ブログをやってみたいひと、うまく文章を書けなくて悩んでいるひとは、ぜひ手にとってみてください。
アウトプットに関するヒントを得られると思います。
『理科系の作文技術』のレビュー
中島聡さんが影響を受けた、『理科系の作文技術』には漫画版が出ています。
漫画版のレビューを以下の記事に書きました。