MacBook Proの最適なディスプレイ設定【Liquid Retina XDR】

公開日 2021-11-04 最終更新日 2021-11-05

2021年10月発売のMacBook Proは、Liquid Retina XDRディスプレイを搭載しています。
このディスプレイには写真や映像の編集など、制作に適したモードが標準装備されています。
作業の際は適したモードを選ぶことで、よりイメージに近い結果を得られそうです。

そこでこの記事では、Liquid Retina XDRディスプレイで制作する際の、適切なモードについて解説します。

MacBook Proの最適なディスプレイ設定【Liquid Retina XDR】

用意されているモードは、リファレンスモードと呼ばれています。
リファレンスモードの変更は、ディスプレイの環境設定で行います。
場所は以下のとおりです。

システム環境設定 > ディスプレイ > プリセット

ディスプレイの環境設定から、リファレンスモードを選ぶ
ディスプレイの環境設定から、リファレンスモードを選ぶ

用意されているリファレンスモードは、以下の項目です。

リファレンスモード使用用途
Apple XDR Display (P3-1600 nits)鑑賞用
Apple Display (P3-500 nits)執筆用
HDR Video (P3-ST 2084)HDR動画制作
HDTV Video (BT.709-BT.1886)HD動画制作
NTSC Video (BT.601 SMPTE-C)SD動画制作
PAL & SECAM Video (BT.601 EBU)SD動画制作
Digital Cinema (P3-DCI)モーションキャプチャ・ポスプロ
Digital Cinema (P3-D65)モーションキャプチャ・ポスプロ
Design & Print (P3-D50)紙媒体制作
Photography (P3-D65)ディスプレイ表示用の写真編集
Internet & Web (sRGB)ウェブサイト制作
リファレンスモードと使用用途

以下から、それぞれのモードについて詳しく解説します。

鑑賞に適したモード

Apple XDR Display (P3-1600 nits)

ディスプレイのデフォルトのモードは、Apple XDR Display (P3-1600 nits)です。
P3とはApple独自の色空間で、その情報量は代表的なsRGBより約25%も多いです。
またこのディスプレイの売りの一つである、最大1600ニトまでの輝度が可能です。

ニトとは?

最大1600ニトと言われても、ピンとこないかもしれません。
ニト(nit)とは、ディスプレイの明るさを表現する単位です。

例えば比較として、液晶テレビのニトを取り上げてみます。
流通している液晶テレビのニトは、300~800ニトです。
液晶テレビはリビングでの利用を想定しており、一般的なモニターより明るく設定されています。

つまり「最大1600ニト」は、かなり明るい液晶テレビのさらに倍の明るさまで出せるということです。

最大1600ニトの使用機会としては、強い日差しの下などがありますね。
過酷な状況でも作業できるように、高い輝度まで出せるようにしているのでしょう。

明るすぎるディスプレイは制作に不向き

しかしそれだけ明るいディスプレイを制作に使うと、適性露出に調整できないように思えます。
そのためApple XDR Display (P3-1600 nits)は、室内で使う分には、制作より映像や写真を鑑賞する際に適しています。

制作時には後述するそれぞれのモードを選んだほうが、よりイメージに近い結果を得られると思います。

執筆に適したモード

Apple Display (P3-500 ニト)

Apple Display (P3-500 ニト)はP3の色域を持ちながら、最大輝度を500ニトに抑えられます。
このモードを使うシーンは、執筆などで長時間ディスプレイを見るときでしょうか。

執筆であれば、明るいディスプレイは必要ありません。
むしろ控えめほうが目の疲労を低減でき、バッテリーの節約にもなります。

動画制作に適したモード

動画制作に適したリファレンスモードは、6種類用意されています。
動画は規格が多岐にわたり、自分の手には余ります。
そのためここでは、HDR Video (P3-ST 2084)だけの解説にとどめます。

HDR Video (P3-ST 2084)

HDR Video (P3-ST 2084)は、HDR(ハイダイナミックレンジイメージ)に対応したモードです。

HDRとは、従来より明るさの範囲が広い表示の技術です。
通常の表示技術では、暗い部分に露出を合わせると明るい部分が白飛びしてしまい、明るい部分に露出を合わせると今度は暗い部分が黒つぶれするケースがあります。

一方、HDRは露出の異なる映像を組み合わせることで、白飛びや黒つぶれを軽減して表示します。
その結果、人間が目で見たときの状態に近い映像を表現できます。

ST 2084とは、表示する機器にかかわらず、最大輝度を1000ニトに固定する規格です。
機器ごとの最大輝度に左右されないため、安定した明るさを表示できます。

紙媒体制作に適したモード

Design & Print (P3-D50)

Design & Print (P3-D50)は、紙媒体への出力を前提としたモードです。

P3は前述の通り、Apple独自の広い色空間です。
D50とは、制作した完成品を見るときの環境の色温度を表しています。

印刷物はD50(色温度5003K)を使用

雑誌などの紙媒体は、自ら発光するディスプレイと違い、光がないと見ることができません。
紙に印刷された色は、そこに当たる光の反射が目に入ることで色として認識します。
そのため紙に印刷された色は、それを見るときの環境光に左右されるのです。

紙媒体を見るときの環境は、朝の光や昼の光、室内の蛍光灯など様々。
デザイナーと印刷業者とで、想定している環境光がバラバラだとどうなるでしょうか。
デザイナーがイメージしている色と印刷物の色とが、異なってしまいます。

そのため「印刷物では、それを見る人の環境光(色温度)を決めよう」となりました。
その環境光の色温度が、D50(5003K)というわけです。
ちなみにD50(5003K)は、イメージ的には昼間の屋外の光です。

ただ実際にディスプレイをD50に設定すると、結構アンバー(黄色み)に感じます。
厳密な色味を求めるなら、このモードで制作して色校正を出した上で、最適な制作モードを検討したほうが良いと思います。

ディスプレイ表示を前提とした、写真編集に適したモード

Photography (P3-D65)

Photography (P3-D65)はウェブサイトやInstagramなど、ディスプレイでの鑑賞を前提とした写真の編集モードです。

雑誌や写真展でのプリントなど紙媒体で出力するなら、前述のDesign & Print (P3-D50)を検討して良いかもしれません。
繰り返しになりますが、紙媒体の場合は一旦、試し刷りをしてから、どちらのモードで制作するか決めたほうが安全です。

ウェブ制作に適したモード

Internet & Web(sRGB)

最後のInternet & Web(sRGB)は、ウェブサイト制作のモードです。
色空間(カラースペース)がMac独自のP3ではなく、より狭く一般的に流通しているsRGBです。

ウェブサイトを作るなら、多くのユーザが見るsRGBの色空間で作ったほうが、実際の見え方に近いものになります。

制作環境に合わせて、さらにカスタマイズ可能

リファレンスモードのプリセットは、さらにカスタマイズが可能です。
「プリセット > プリセットをカスタマイズ > +(プラスボタン)」と進むと、カスタムのポップアップが出現します。

リファレンスモードはカスタムが可能
リファレンスモードはカスタムが可能

カスタムできる項目は、色域や色温度、最大輝度など。
制作する場所の環境光が特殊な場合、カスタムしてより正確な状態にしたほうが良いでしょう。

キャリブレーションとは

以上がLiquid Retina XDRディスプレイに搭載されている、リファレンスモードの解説でした。
ここからは、ぼくがリファレンスモードを発見した経緯と所感を書いてみます。

もともとぼくはLiquid Retina XDRディスプレイを、キャリブレーションしようと思っていました。
この記事を読むような人はご存知でしょうが、それでもあえて解説すると、キャリブレーションとはディスプレイの色調整です。

ディスプレイで見る前提なら、キャリブレーションに神経質にならなくて良い

ディスプレイの色は、個体によって異なります。
また使用年数が経つにつれて、経年劣化により色が変化します。
それらまちまちのディスプレイで制作すると成果物の色が揃わないため、キャリブレーションしてディスプレイの色を合わせる必要があります。

といっても、例えば1台のパソコンだけで写真を編集し、ブログやSNSなどディスプレイ表示だけするなら、それほど神経質にならなくて良いかなと思います。
なぜなら、画像を見るユーザのスマホやタブレットの色自体が、まちまちだからです。

複数のパソコンや紙媒体出力が前提なら、キャリブレーションは必要

しかし編集に複数のパソコンを使ったり紙媒体に写真を出力したりする際は、キャリブレーションが必要です。

複数のパソコンを使うなら、ディスプレイの色を合わせる必要があります。
色の合っていない複数のディスプレイで編集すると、アウトプットの色がバラバラになってしまいます。

写真スタジオやデザイン事務所など、複数人が個別のパソコンで作業する際はもちろん、個人でも2台のパソコンで編集するなら、キャリブレーションでディスプレイの色を合わせるべきです。

また紙媒体に出力するなら、プリント用にディスプレイの色をキャリブレーションしたほうがイメージに近い結果が出ます。

i1Display Proでいつもキャリブレーションしていたが…

ぼくは執筆時点で、2台のMacを所有しています。
そのどちらでも写真補正する機会があるため、Macを買い換えるたびにX-Riteのi1Display Proというツールでディスプレイの色を合わせていました。

しかし今回、MacBook Pro14インチをi1Display Proでキャリブレーションしたところ、作成したプリセットを適用できませんでした。
いつもはディスプレイの環境設定のプリセットに作成したものが出現するのですが、リファレンスモード以外に見当たらず…。

i1Display Proのプリセットを探すうち、リファレンスモードの存在に気づいた

ひょっとしたらi1Display Proが、Liquid Retina XDRディスプレイに未対応なのかもしれません。
そこでプロファイルを読み込む方法がないか調べるうち、今回解説したリファレンスモードの存在を知ったというわけです。

前述の通り2台のパソコンで色味が違うのは、制作において好ましくありません。
そのためしばらくは、よりディスプレイ品質の高いMacBook Pro14インチだけで、写真編集しようかなと考えています。

まとめ

以上のような経緯で、Liquid Retina XDRディスプレイの多彩な編集モードを知ることになりました。
Appleのディスプレイ調整の信頼が前提とはなりますが、制作物に合わせディスプレイのモードを変更できるのは便利ですね。

ただディスプレイは使っているうちに、徐々に色が狂ってきます。
あらかじめモードがあるのはありがたいですが、経年劣化の色の狂いはどのように対応したらよいか…。
より正確なディスプレイを求めるなら、やはり一定期間ごとにキャリブレーションすべきかなと思います。