AppleのLiquid Retina XDRディスプレイには、写真や映像の編集など、それぞれの製作に適したプリセットが標準装備されています。
作業の際は適したプリセットを選択することで、よりイメージに近い結果を得られるでしょう。
この記事ではLiquid Retina XDRディスプレイで製作する際の、適切なプリセットについて解説します。
AppleのLiquid Retina XDRの最適なディスプレイ設定
まずはプリセットの変更方法を解説します。
プリセットを変えるには、「システム設定」の「ディスプレイ」を開き、「プリセット」から最適なものを選択します。
もしくはメニューバーの「コントロールセンター」から、「ディスプレイ」をクリック。
さらにディスプレイをクリック。
展開したメニューから、代表的な4つのモードが選べます。
用意されているプリセット
Liquid Retina XDRディスプレイに用意されているプリセットは、以下の通りです。
プリセット | 使用用途 |
---|---|
Apple XDR Display (P3-1600 nits) | 鑑賞用 |
Apple Display (P3-500 nits) | 執筆用 |
HDR Video (P3-ST 2084) | HDR動画制作 |
HDTV Video (BT.709-BT.1886) | HD動画制作 |
NTSC Video (BT.601 SMPTE-C) | SD動画制作 |
PAL & SECAM Video (BT.601 EBU) | SD動画制作 |
Digital Cinema (P3-DCI) | モーションキャプチャ・ポスプロ |
Digital Cinema (P3-D65) | モーションキャプチャ・ポスプロ |
Design & Print (P3-D50) | 紙媒体制作 |
Photography (P3-D65) | ディスプレイ表示用の写真編集 |
Internet & Web (sRGB) | ウェブサイト制作 |
それぞれのプリセットについて、詳しく解説します。
鑑賞に適したプリセット
Apple XDR Display (P3-1600 nits)
ディスプレイのデフォルトは、Apple XDR Display (P3-1600 nits)です。
P3とはApple独自の色空間で、その情報量は代表的なsRGBより約25%も多いです。また、最大1600ニトまでの輝度が可能です。
ニトとは?
ニト(nit)とは、ディスプレイの明るさを表現する単位です。
比較として、液晶テレビのニトを取り上げてみます。
流通している液晶テレビのニトは、300~800ニトです。液晶テレビはリビングでの利用を想定しており、一般的なモニターより明るく設定されています。
つまりApple XDR Displayの「最大1600ニト」は、かなり明るい液晶テレビのさらに倍の明るさまで出せることになります。
明るすぎるディスプレイは製作に不向き
最大1600ニトの使用機会としては、屋外での強い日差しの下がありますね。
一方、室内でそれだけ明るいディスプレイを使うと、適性露出に調整できないでしょう。
このプリセットは、室内では鑑賞用として使用し、写真や動画など製作時にはそれぞれの適したモードを選択する。
そういった使い分けをすると、イメージに近い結果を得られると思います。
執筆に適したプリセット
Apple Display (P3-500 ニト)
Apple Display (P3-500 ニト)はP3の色域を持ちながら、最大輝度を500ニトに抑えています。
このモードを使うシーンは、執筆などで長時間ディスプレイを見るときです。
執筆であれば、明るいディスプレイは必要ありません。むしろ控えめのほうが目の疲労を低減でき、MacBook Proならバッテリーの節約にもなります。
動画制作に適したプリセット
動画制作に適したプリセットは、6種類用意されています。
動画は規格が多岐にわたるため、この記事ではHDR Video (P3-ST 2084)だけの解説にとどめます。
HDR Video (P3-ST 2084)
HDR Video (P3-ST 2084)は、HDR(ハイダイナミックレンジイメージ)に対応したプリセットです。
HDRは露出の異なる映像を組み合わせることで、白飛びや黒つぶれを軽減して表示します。その結果、人間が目で見たときの状態に近い表現が可能です。
またST 2084とは、表示する機器にかかわらず、最大輝度を1000ニトに固定する規格です。機器ごとの最大輝度に左右されないため、安定した明るさを表示できます。
紙媒体制作に適したプリセット
Design & Print (P3-D50)
Design & Print (P3-D50)は、紙媒体への出力を前提としたプリセットです。
P3は前述の通り、Apple独自の広い色空間です。D50とは、完成品を見る際の色温度を表しています。
印刷物の色は、環境光に左右される
雑誌などの紙媒体は、自ら発光するディスプレイと違い、光がないと見ることができません。
紙に印刷された色は、そこに当たる光の反射によって認識できます。そのため紙に印刷された色は、それを見るときの環境光に左右されるのです。
環境光の色温度を5003Kに統一
紙媒体を見るときは、朝の光や昼の光、室内の蛍光灯など様々な環境となります。
もしデザイナーと印刷業者とで、環境光がバラバラだとどうなるでしょうか。デザイナーがイメージしている色と印刷物の色とが、異なってしまいます。
そのため「印刷物では、環境光(色温度)を統一させよう」となりました。その色温度が、D50(5003K)というわけです。
D50は昼間の屋外の光
ちなみにD50(5003K)は、イメージ的には昼間の屋外の光です。
ただ実際にディスプレイをDesign & Print (P3-D50)に設定すると、結構アンバー(黄色み)に感じます。
厳密な色味を求めるなら、このモードで製作して色校正を出した上で、さらに色を追い込んでいったほうが良いです。
ウェブ用の写真編集に適したプリセット
Photography (P3-D65)
Photography (P3-D65)はウェブサイトやInstagramなど、ディスプレイでの鑑賞を前提とした写真の編集モードです。
雑誌や写真展でのプリントなど、紙媒体で出力するなら、前述のDesign & Print (P3-D50)を検討して良いかもしれません。
ただ繰り返しになりますが、紙媒体の場合は一旦、試し刷りをしてから、どちらのモードで制作するか決めたほうが安全です。
ウェブ制作に適したプリセット
Internet & Web(sRGB)
最後のInternet & Web(sRGB)は、ウェブサイト制作のモードです。
色空間(カラースペース)がMac独自のP3ではなく、一般的に流通しているsRGBとなっています。
ウェブサイトを作るなら、多くのユーザが見るsRGBの色空間で作ったほうが、実際の見え方に近いものになりますね。
まとめ
以上、AppleのLiquid Retina XDRディスプレイに搭載されている、プリセットの解説でした。
製作するものに合わせ、ディスプレイ設定をプリセットで変えられるのはとても便利です。
ただどんなに優れたディスプレイも、時間が経つとともに徐々に色が狂ってきます。
色味により厳密さを求めるなら、ディスプレイを定期的にキャリブレーションしたり、数年使ったら買い替えを検討したりしたほうが安全ですね。
良いディスプレイで目を労りながら、作品を作っていきましょう。