引越しをする際、「収納のある・なし」を気にする人は多いと思います。
収納があると普段使わないものをしまっておけるので便利です。
ただ収納のスペースがあればあるほど、生活に必要のない余分なものが溜まっていきます。
この記事では拙著『ものを手放そう。 捨てることで見える本当の価値』から一部を抜粋・編集し、収納があるとものが溜まる理由を解説します。
収納の分だけ、ものはたまる
引越しで部屋を探す際、収納があるかないかを気にする人は多いと思う。不動産屋や住宅メーカーにしても、収納が十分にあることを売り文句にする。
なぜ収納のある・なしを気にするかといえば、多くの人が収納が必要なほどものを持っているからだ。
なるほど、これは自然な理屈に思える。ものを多く持っているなら、それをしまっておくだけの空間が必要だ。しかしひょっとして、順番が逆なのではないだろうか。
つまりものがあるから収納が必要なのではなく、収納があるからそこにしまえるだけものが増えるのではないだろうか。
パーキンソンの法則
パーキンソンの法則をご存じだろうか。この法則は、イギリスの歴史学者・政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソン氏が、著作『パーキンソンの法則:進歩の追求』で提唱したものだ。
この著作でパーキンソン氏は、「仕事をする時間と予算は、与えられた範囲内に膨張する」と説いた。
例えば仕事で「3日以内に〇〇をやれ」と命じられたとしよう。実際、その仕事が1日で終わる程度の量だとしても、「3日以内」と期限を設けられたらその時間を目一杯に使うこととなる。
「100万円の予算で、このプロジェクトを進めよ」と指示を受けたとしよう。実際は予算の半分、50万円程度で完遂できるプロジェクトであっても、仕事は予算のすべてを使い切るまで増えることとなる。
組織で仕事している人は、この現象に心当たりがあるのではないだろうか。
会議を1時間と定めたら、議題が終わっても時間いっぱいまで会議は長引く。国の税金など際たる例で、必要があってある年に増税すれば、翌年以降も増やした分だけの予算をすべて使い切るため減税できなくなる。
このパーキンソンの法則を知っておけば、膨張する時間や予算を食い止められる可能性が出てくる。「与えられた分をすべて使い切るのではなく、必要な分だけ使うようにしよう」と意識できるからだ。
そしてこれは仕事だけでなく、プライベートにも活用できる。
収納があると買い物の基準が甘くなる
冒頭に出した、引越しの例に戻ろう。
引越し先を検討した結果、収納が十分にある家へ移ったとする。そこに住み始めた当初は、収納すべてを使うほどものは持っていない。しかし居住して数年が経つうち、ほとんどのケースで収納はものでいっぱいになる。
パーキンソンの法則によって、しまえる場所があればそのスペースの分だけものは増えていくのだ。
収納があると、「使わなくなればそこに入れておけば良い」とものを買う基準が甘くなる。本来は捨てるはずのものも、とりあえず収納へしまっておくようになる。
そうして収納があることで、皮肉にも不要なものが溜まっていく。
もし現状で収納に隙間なくものが入っているなら、「収納があるから余計なものが溜まるのではないか?」と疑ってみてほしい。
中に入っているものを一つ一つ精査してみると、もう何年も使っていない不要なものがたくさん出てくるかもしれない。
収納も居住空間の一部だ。その中に捨てて良いような無駄なものを入れているのは、単純にスペースの無駄遣いといえる。
「収納の分だけものは増える」このパーキンソンの法則を意識すれば、もっとものを減らすことができる。