MacBook Proのキーボードが、2019年11月発売の16インチから刷新されました。評判の悪かったバタフライ構造から、シザー構造へ変更です。
バタフライキーボードの何が悪かったのか。シザーキーボードで良くなったのか。
この記事では、バタフライキーボードとシザーキーボードの違いを解説します。
バタフライ構造とは
まず2019年までAppleが採用していた、バタフライキーボードの構造を解説します。
バタフライキーボードは、蝶々の羽のように、キーを逆ハの字の金具が支えているキーボードです。金具がバネのように反発し、タッチしたキーを押し戻します。
従来よりキーストロークを浅くでき、その分、安定性が4倍も向上しました(Appleの発表による)。
MacBook 12インチのために開発
バタフライ構造のキーボードは、2015年MacBook 12インチに初搭載されました。
当時のAppleのデザインを統括していたジョナサン・アイブは、MacBook12インチの発表会で以下のように話しています。
「我々はひとつの組み立てによる、堅牢なバタフライ構造(のキーボード)を作成した」
バタフライキーボードはもともと、MacBook 12インチの極薄ボディを実現するために生み出されたものでした。
バタフライキーボードの3つの欠点
そんなバタフライキーボードは、登場から色々と欠点が指摘されていました。主な欠点は、以下3つです。
1. 反応しないキーが出てくる
バタフライキーボードは、12インチの極薄ボディのために開発されました。
その薄さゆえ、致命的な欠点を持つことになります。キーボードの隙間にホコリが溜まると、キーが効かなくなってしまうのです。
エアダスターを使えば改善するが…
ぼくの経験上、無反応になったキーは、エアダスターを使って隙間のホコリを吹き飛ばすことで復活します。
ある程度は自力で修復できるにせよ、「またキーが効かなくなるかもしれない」と不安を抱えながら使うのはちょっと嫌ですね。
リニューアルを重ねても、不具合を解消できず
バタフライキーボードへの苦情はAppleへ大量に届いていたようです。
バタフライキーボードの不具合に対し、Appleは販売から4年間の無償修理を受け付けています。以下リンクは、Apple公式サイトのアナウンスです。
Apple公式サイト >> MacBook、MacBook Air、MacBook Pro キーボード修理プログラム
無償修理の対象マシンを見ると、2019年モデルも入っています。
2015年にバタフライ構造を採用して以来、何度もキーボードのリニューアルをしたものの、結局不具合を解消できなかったことがわかります。
2. 打ちづらい
バタフライ構造の第2の欠点は、キーの沈み込みが浅く打ちづらいことです。
ネット上では「指が痛くなる」「疲れる」など、ネガティブな意見がよく見られました。
3. 打鍵音がうるさい
最後は、打鍵音です。バタフライキーボードは、打鍵時に「パチパチパチ」とオハジキを弾いているような音がします。
一般的なラップトップのキーボードに比べ音が大きく、カフェなど公共の場では使っていると、悪目立ちしてしまいました。
シザー構造のキーボードへ変更
それら欠点がありつつも、ホコリが入らないようにしたり、静寂性を高めたりとリニューアルを繰り返しました。
しかしその努力も実らず、2019年11月発売のMacBook Pro 16インチから、以前のシザー構造へ戻したわけです。
シザー構造とは
変更となったシザーキーボードとは、どういう構造か。
シザーとは、ハサミを意味します。その名の通り、キーの下を2枚構造の金具がハサミのように交わり、エックス型で支えます。
下画像は2015年春の、Appleイベント“Spring Forward”の新MacBook紹介時のもの。左がシザー構造、右がバタフライ構造です。
バタフライの欠点を解消
バタフライ構造が反発力でキーを支えるのに対し、シザー構造は2枚の組み合わせでキーに弾力を持たせます。
シザー構造はバタフライ構造に比べ、確かに安定性は劣るでしょう。しかしより深く沈み込むことで、打ちやすく、静かになり、ホコリにも強くなりました。
シザー構造に戻した結果、バタフライ構造の欠点をすべて修正できたのです。
ボディの薄型化を諦めたApple
キーボードをシザーへ戻した結果、当然ながら厚みは以前よりも増しました。
それまでMacBook Pro 15インチの厚さが15.5ミリだったのに対し、シザーキーボードに戻した16インチは16.2ミリと、0.7ミリ厚くなりました。
キーストロークはそれぞれ、バタフライ構造が0.55ミリ、シザー構造が1ミリ。
その差が0.45ミリあるわけですから、0.7ミリ増加した厚みはキーボード刷新によるトレードオフと言えそうです。
バタフライキーボードとシザーキーボードの打鍵感の違い
シザーキーボードを採用したMacBook Pro 16インチを使ってみると、以前に比べ確かに打ちやすくなったと感じます。
打ちやすくなったというより、「普通のキーボードになった」がより正確かもしれません。
シザーキーボードは、バタフライ構造より反発力が弱いです。押下する指の力を2枚のクッションが吸収し、柔らかく押し戻します。
逆ハの字で反発するバタフライキーボードとは、明らかにキータッチが異なります。
文字を打っていて、心地よさがある
「普通のキーボードになった」と書きましたが、そこはアップルの製品です。キー表面の触り心地や沈み込む感触に、独特の心地よさがあります。
Appleはこの新しいシザー構造の開発に、かなり神経を使ったのでしょう。
バタフライ構造が苦手だったひとは、シザー構造のMacBook Proに良い印象を持つはずです。
大きく改善した、打鍵音
打ちやすさだけでなく、打鍵音も改善しました。バタフライ構造のような、「パチパチパチ」という音はありません。
無音とまでいきませんが、小さく「カチャカチャ」と鳴る感じ。平均的なラップトップのキーボードに比べても、静かな部類に入ると思います。
まとめ
以上、バタフライキーボードとシザーキーボードの解説でした。
バタフライキーボードの欠点は、以下の3つ。
- 反応しないキーが出てくる
- 打ちづらい
- 打鍵音がうるさい
それらを解消したシザーキーボードの利点は、以下3点でした。
- 故障の心配が減った
- より打ちやすくなり、疲労が軽減
- 打鍵音が静かになった
MacBookの厚みは増したものの、打ちやすさはシザーキーボードが断然上。
AppleがMacBook Proのキーボードをバタフライ構造からシザー構造へ戻したのは、多くの人にとって歓迎することだったと思います。