親指シフトをやめようかと検討中。リターンに対してのデメリットが多すぎる

公開日 2021-09-06 最終更新日 2021-09-22

親指シフトをご存知でしょうか。
親指シフトは、キーボードの打鍵法の1つ。
打鍵するキー数の少なさが、特徴です。

ぼくはこの親指シフトを執筆時点で7年間、使用していますが、ローマ字打ちに戻そうかと検討しています。
なぜ、親指シフトをやめようと思い始めたか。
この記事では、7年間使って感じた親指シフトの、致命的デメリットを伝えてみます。

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親指シフト導入のきっかけ

ぼくが親指シフトを習得したのは、2014年8月です。
普段から文字を多く打っていたため、「少しでも速く、疲れずに打つ方法はないか」と考えていました。

そんなときに親指シフトの存在を知り、「これは試してみる価値があるかも」と練習を始めたのが導入のきっかけです。

親指シフトとは

そもそも親指シフトとは、何なのか。

親指シフトは、1979年に富士通が考案したキー配列です。
ローマ字入力は子音の表示に、2回以上キーを押す必要があります。
一方、親指シフトは、一度の入力で50音すべてを表示できます。
キーを押す頻度が少なくなるため、タイピングスピードがローマ字入力より速くなると言われています。

効率的な理想の打ち方

50音を1度の打鍵でできるなら、かな入力と同じと思うかもしれません。
かな入力との違いは、親指シフトはホームポジションからほとんど指を動かさなくてよい点です。

打つときの体勢は、両手の4本ずつの指をホームポジションに置き、両親指をスペースキーの両隣の変換・無変換などに置きます(親指の場所は設定でかえられます)。
そして一般キーの単独打鍵と、一般キーと親指に置いているキーとの同時打鍵を組み合わせ、すべてのキーを入力します。

つまり親指シフトとはローマ字入力の指の移動の少なさと、かな入力の効率の良さの両方を備えた、理想的な打ち方と言えるのです。

親指シフトをやめようかと検討中。リターンに対してのデメリットが多すぎる

このような説明を聞くと、すごくよい打ち方だと思うでしょう。
実際にぼくも7年間、親指シフトを使ってみて、よかったと思うことがたくさんあります。

ただ大きな問題が、ひとつあります。
親指シフトは、パソコンに標準装備された規格ではないのです。
そのため環境を整えるのに、いろいろと手間がかかります。

7年間親指シフトを使ってみて、デメリットに思えた部分を説明します。
7つあります。

  1. 専用のエミュレータかアダプタを必要とする
  2. OSのアップデートのたびに、環境の整備が必要
  3. キー入力に不具合が出る
  4. 片手で打てない
  5. 好きなキーボードを使えない
  6. 英語を表示したいときローマ字入力に比べて混乱する
  7. あまり使わない文字の場所を忘れてしまう

1. 専用のエミュレータかアダプタを必要とする

親指シフトは、パソコンに標準装備されていません。
そのため使用する際には、専用のエミュレータかアダプタを必要とします。
Macの場合は、Lacailleというソフトをインストールすれば、親指シフトが可能になります(他にKarabiner Elementsを使う方法があります。Lacailleより少し難易度高めです)。

Lacailleは富士通など企業が作っているものではなく、有志の方がボランティアで制作しています。
LacailleがなければMacで親指シフトが打てないため、自分は本当に感謝しながら使っていました。

エミュレータがなくなると使えなくなる

しかし、実はこの状態がとても危険と気づきました。
Lacailleが使えなくなると、Macでの親指シフトができなくなるのです。
企業が部署としてリリースしているならある程度安心ですが、個人の方であれば、いつまでも作成してくれる保証はありません。

ぼくは今、40代後半です。
もし10年後の60代近くになって、急に親指シフトのエミュレータのリリースが終わってしまえば、60代からローマ字入力に戻さなくてはなりません。
その年齢でキーボードの入力方法を変えるのは、かなりの苦痛を伴うでしょう。
親指シフトの大きな欠点は、未来に環境が残っているかが不明な点と言えます。

標準規格のローマ字入力は、99%残っているでしょうから、安心感が全く違います。

「かえうち」を使えば親指シフトができるが、有線環境になる

ちなみに、外付けの「かえうち」というアダプターを使えば、自分の好きなキー入力が可能になります。
「かえうち」を使えばエミュレータなしで親指シフトできますが、以下の欠点があります。

  • キーボードを有線接続する必要がある
  • ノートパソコンなど一体型のキーボードでは使えない

「かえうち」については、以下の記事で詳しく解説しています。

2. OSのアップデートのたびに、環境の整備が必要

2つ目のデメリットは、OSのアップデートのたびに環境の見直しが必要なことです。

2020年11月にmacOS Big Surがリリースされました。
するとエミュレータとの相性が悪いのか、ブラウザのSafariで親指シフト入力ができなくなってしまいました。

Safariを立ち上げて最初のうちは親指シフトで打てるのですが、しばらくするとローマ字入力しか受け付けなくなるのです(このSafariの障害は、確かめたところ正常に戻っていました。)。
そのためメインブラウザを、SafariからChromeに切り替えました。

このようにOSのアップデートに、エミュレータは少なからず影響を受けます。
あまり使っていない機能なら不具合が出ても良いですが、キーボード入力は最も使用するもののひとつ。
キーボード入力に不具合が出るのは、作業する上で大きな障害です。

OSアップデートで、エミュレータ自体が使えなくなるケースも

Lacailleの前は、Karabinerというエミュレータを使っていました。
しかしmacOS Sierraにアップデートした際、Karabinerが使えなくなったトラブルを経験しています。
Lacailleもいつ何時使えなくなるかと思うと、親指シフトにリスクを感じずにいられません。

当然ながら標準規格のローマ字入力には、このような不安が一切ありません。

3. キー入力に不具合が出る

これはキー配列の問題ですが、キーボードを親指シフト配列にすると、そのままでは表示されない記号が出てきます。

例えば、カギカッコ。
カギカッコのキーを入力しても「」と表示されないため、入力時には、かっこと書いて変換するようにしていました。
これは単純に、時間のロスです。

他にもスリープ解除して最初の入力時は、たまに親指シフトではなくローマ字入力になるという現象も。
英数とかなの切り替えを何度かすると親指シフトに切り替わりますが、この余計な動作もローマ字入力なら不要です。

トータルの入力時間は変わらない

キーの不具合は、書き出すと切りがありません。
確かに親指シフトは、キーの入力数がローマ字入力に比べて少ないです。
そのため高速に打てるかもしれませんが、これら不具合を修正しつつ打っていると、「トータルの時間はそんなに変わらないのでは」と思えてきます。

4. 片手で打てない

親指シフトは、かな文字の半分以上を同時打鍵で行います。
そのため、両手をキーポジションに置かないとキー入力できず、片手での文字入力が困難です。

片手で文字を打ちたい機会は、それなりにあります。
一番は、なにかを食べているとき。
箸やスプーンで片手が塞がっていたり、お菓子を食べて手が汚れたりしているときなど、片手操作で調べ物をしたくなります。

しかし親指シフトでは、それが許されません。
箸を置いたり手をティッシュで指を拭いたりしてから、両手をキーポジションにきちんと置く必要があります。
これもまた、親指シフトが非効率に思える部分です。

5. 好きなキーボードを使えない

親指シフトは、同時打鍵のため親指のキーを必要とします。
そのためMacの場合は、マジックキーボードのUS版が使えません。
コマンドキーと競合してしまうからです。

USキーボードで親指シフトを実現するやり方はあるらしいですが、「USキーボードを使用する」というただそれだけのことで、調査と設定の労力がかかります。
ローマ字入力であればそんな手間は不要なので、単純に無駄な時間に思えます。

iPad Pro用のマジックキーボードはどうあがいても使えない

また、iPad Proのフォリオカバーのマジックキーボードも使えません。
これは裏技も何もなく、どうあがいても無理。
iPad OSはサードパーティのキー入力を認めていないため、親指シフトのエミュレータがそもそも存在しないのです。

ぼくはiPad Proが好きなので、フォリオカバーのマジックキーボードには興味津々です。
親指シフトを選択している以上、使うことは現状では不可能と諦めていました。
しかしよく考えれば、ローマ字入力に戻せばどんなキーボードでも使えるのです。
こういったキーボードの制約も、親指シフトをやめようかと思った理由の1つです。

6. 英語を表示したいときローマ字入力に比べて混乱する

文章を書いていると、英語表記を書くケースが出てきます。
ローマ字入力であればキー配列がそのままアルファベットなので、混乱なく英単語を書くことができます。

一方、親指シフトは、アルファベット配列とは全くリンクしない独自のものです。
そのため親指シフト配列からアルファベット配列に戻して文字を打つと、若干の混乱が生じます。
些細なことですが、デメリットにはかわりありません。

7. あまり使わない文字の場所を忘れてしまう

親指シフト配列はキーボードにプリントされていないため、文字の場所をど忘れすると非常に面倒です。
例えば「パ行」や「ぁ、ぃ、ぅ、ぇ、ぉ」など、あまり使わない文字。

場所を忘れると、うろ覚えでいろいろなキーを押して探し当てることとなり、これもまた余計な労力がかかります。

親指シフトを使用すると、「これは良いものだ」とバイアスが掛かる

ここまで、親指シフトの欠点を色々と書いてきました。
これら欠点があったとしても、上回るメリットがあれば使い続けたほうが良いです。

親指シフトのメリットには、以下のようなものがあります。

  • 文字入力が高速になる
  • 文字をストレスなく打てる

これらのメリットは、ぼくが誰かへ親指シフトの良さを伝える際によく話していたことです。
しかし冷静に考えると、これらは自分のポジショントークだったかもしれません。

親指シフトは習得までに時間がかかる

親指シフトを習得するには、ある程度の時間が掛かります。
早い人でも、1カ月弱。
時間のかかる人では、1年以上を要します。

自分の場合は、「ローマ字入力並みのスピードになってきた」と感じたのは、使い始めて1年くらいでした。
親指シフトには、そのくらいの時間と労力がかかります。
そのため習得したあとは、「親指シフトは良いものだ」とバイアスがかかってもしょうがないのです。

ローマ字入力でも高速に打てる

確かに打鍵の数は、ローマ字入力より親指シフトの方が少ないです。
それは間違いないのだけど、キー入力の速度自体は、実際にそれほど差がない気もします。

というのも、自分はローマ字入力をしていたときも、平均よりは速く打てる方でした。
親指シフトを7年間使ってみて、当時のローマ字入力より今が圧倒的に速いとは思えないのです。

「よーいどん」で競争すれば速いのでしょうが、段違いというわけではない。
デメリットで書いたキーの不具合による調整の時間を考慮すると、ほとんど変わらないのではと思えてきます。

ローマ字入力でも指はしゃべる

親指シフトの大きな特徴として、「キー入力に無駄がなく、ストレスなく打鍵できる」があります。
その状態は、親指シフト愛好家から「指がしゃべる」と表現されます。

確かに親指シフトに慣れると、文字入力の快適さを感じます。
ただしそれは、完全に習得したローマ字入力であっても、同じ状態になるのではと思えます。

いちいち脳内でローマ字に変換などしない

親指シフトに比べてローマ字入力は、非効率とよく言われます。
その代表的な理由として、「頭の中でローマ字に変換してから打つため、脳に余計な負担がかかる」があります。

しかし考えてみると、ローマ字入力を使っている人で、実際に頭の中で一度ローマ字へ変換している人はいないはずです。
ローマ字入力のキー配列を指が覚えているので、「翻訳してから打つ」といったまどろっこしいプロセスはしないで、指が無意識に適切な入力を行っていると思います。
そのため親指シフトの愛好者が主張するほど、ローマ字入力も脳の負担はないでしょう。

ローマ字入力を完璧に習得して高速タイピングできる人に、「いちいち脳内でローマ字に変換してから打つのは、ストレスじゃないですか?」と尋ねたら、質問の意味自体を理解できないかもしれません。

文筆家のほとんどがローマ字入力を使っているという事実

最も文字入力を必要とする職業のひとつが、小説家です。
もし大部分の小説家が親指シフトを使っているなら、「やはり親指シフトはローマ字入力に比べ、思考を文字化するのに適しているのだ」と思えます。

しかし実際のところ、小説家で親指シフトを使っている人はごく一部。
ほとんどがローマ字入力しています(ひょっとしたら、公表していないだけかもしれませんが)。
「思考やビジュアルを文字化する専門家が、親指シフトをそれほど使っていない」この事実ひとつとっても、ローマ字入力に比べ親指シフトが優れていると言い切れない部分です。

まとめ

以上のような考えをもとに、ぼくはとりあえず1カ月間ほどローマ字入力へ戻すことにしました。
この文章も早速ローマ字入力で打っていますが、ともかく久しぶりでミスタッチが多く、入力に手間取ってしまいました。
特にローマ字入力の「あ」は親指シフトでは「う」にあたるため、「う」と「あ」の打ち間違いを百回くらいやったと思います。

ともかく、1カ月ほどローマ字入力に戻してみて、それでも「親指シフトの方がやはり良い」と思えたなら、親指シフトに戻します。
その結果は、この記事の追記か新しい記事としてお伝えします。

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こちらの記事を書きたら、色々と批判をいただいてびっくりしました。
批判をいただいた経緯を、以下にまとめました。

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