アメリカで起こっていることは、時間を置いて日本でも発生するケースが多いです。
アメリカのドキュメンタリー映像を見れば、日本に起こるかもしれない未来を垣間見れます。
先日、興味深いアメリカのドキュメンタリー映像を見ました。Netflixオリジナルドキュメンタリー『テイク・ユア・ピル:スマートドラッグの真実』です。
アデロールとはスマートドラッグ
ここで取り上げているスマートドラッグは、アデロールという薬です。
アデロールはADHD(注意欠如・多動性障害)の治療薬として、アメリカで販売されています。
ADHDとは注意力散漫になって、じっとしていられない症状です。アデロールを飲むとADHDの症状が収まり、物事に集中できるようになります。
ADHD気味のお子さんを抱えるアメリカのお母さんは、この薬を子どもに服用させているのです。
効果は集中力のアップ
この薬が問題視されているのは、ADHDではない通常の人が「集中力を高めるため」に使っているからです。
いわゆる「ハイ」になるためドラッグを購入するのではなく、勉強や仕事など成果を出すためドラッグに頼る人が増えているのです。
学生や起業家などが常用を告白
アデロールは、アメリカでは処方箋なしにオンラインで購入できます(日本は未認可)。
常用している大学生のインタビューでは、周りの多くの学生が使っていると告白しています。
インタビューに答えている人も、「わずか数ドルで成績がアップするなら安いもの」と悪びれる様子がありません。
他にもIT企業に勤めるエンジニアや金融業に勤める会社員も、インタビューに出演していました。
みな口を揃えて、「集中力を高まるため、アデロールを手放せない」と語っています。
飲むことで対等になれる
学生、エンジニア、金融…、彼らに共通しているのは、過酷な競争社会にいる点です。
薬を飲むものと飲まないものとでは、「能力を引き出す部分で差がついてしまう」と強迫観念があります。
「薬を飲むことで、フェアに競争できる」
「飲まなくては損」
とまで考えています。
そのため薬を飲むことが食事と同じように、当たり前になっているのです。
睡眠障害など副作用を起こす
しかし当然ながら、問題はあります。
一番は高揚感が高まることで、睡眠障害を引き起こします。そのため「よく眠れるように」と、今度は睡眠導入剤を使用するようになります。
アデロールの効きが悪くなると量を増やすようになり、さらに睡眠導入剤の服用も増える。こうしてドラッグの依存状態になってしまうのです。
「素晴らしい人生を送らなくては」と強迫観念
この映像で印象的だったシーンが、以下2つありました。
- 偽薬でも効果があった
- 競争が過熱している
1. 偽薬でも効果があった
2人の被験者にそれぞれアデロールと偽薬を使い検証したところ、偽薬を飲んだ人も「集中力が高まった」と答えました。
つまりアデロールを飲むことで集中力が高まるのではなく、「薬を飲むこと」がきっかけになっているに過ぎないのです。
「飲むことで、潜在能力が引き出される」、アデロールはそんな万能薬ではないのです。
2. 競争が過熱している
もう1つは、「現代は、自分の能力以上のものが求められすぎている」という点です。
今はSNSをはじめ、周りの人の「いい面」を見させられます。
「自分も完璧な人生を送らないといけない」とばかりに、あまりにも「完璧な人生」を追い求め過ぎているのではないか。
アデロールのような薬が流行るのは、そんな過熱した競争社会が背景にあるのです。
数年後の日本で使われているかも
身の丈を越えた自分になろうとして、アメリカ人の多くが無理をしています。無理をすれば、その代償は必ず払わなければなりません。
アデロールを使用してオーバーワークを続けていると、本人が気づかないうちに体も心も朽ちてしまうでしょう。
ちなみに日本でアデロールは認可されていませんが、需要はものすごくありそうに思えますね。
数年後、日本でもアデロールが問題視されている可能性は十分にあります。